7.少年は名付ける
魔法が使えるようになったレスト君。
次に行うべきは、使用する魔法を名付けることだった。
「魔法に名前?それっているのか?絶対?」
「絶対さ。つけなければ暴発してしまうし、ここぞというときに発動出来ない。」
「そ、そうなのか……。」
僕の言葉に素直に頷き、頭を捻る。とっておきの名前を考えているのだろう。
魔法というのはその人の性質が現れる。何せ、使用するために使う魔素は人間の無意識下で生成されるのだから。魔法というのも人間の奥底が関係するのだ。
「身体に、そして意識に馴染む名前にするといい。というか、そうでないと発動しないからね。」
「…………難しいな。それ。」
「あはは。そうだねぇ。難しいねぇ。」
「楽しいそうだなおっさん……。そんなに俺が悩んでるのが面白いか?」
「うん。面白いよ。」
「そこは嘘でも否定しろよ!!」
「えぇ?嘘はいけないよ。」
「していい嘘もあるんだよ!!」
「へぇ。そうなのかい。」
僕との話を中断し、魔法の名付けへと話題を戻す。
再び腕を組みうんうんと唸る姿は微笑ましささえ感じさせた。だが当人にとっては一大事だろう。何せ魔法とは一生もの。この先一生付き合っていくことになるのだから。
「…………ニウス。」
「うん?」
「ロンギニウス。」
レスト君は真面目腐った顔でこちらを向く。
彼の言うロンギニウスとは聖槍とも呼ばれる代物なのだが、一体何故その名が飛び出したのだろう。
「ロンギニウスがどうしたんだい?」
「この槍の、名前だ。」
「!へぇ。君の槍があのロンギニウス…。」
聞きたいことが増えてしまった。聖槍である物がどうしていち少年に渡ったのか。不思議でたまらない。
しかし、ここはレスト君の次なる言葉を待つ。
「この槍は、恩人から貰った大切な槍なんだ。……だから、その名前を魔法の名前にしたい。」
「なるほどね。納得いったよ。」
「?なにがだ?」
「君の魔法さ。……使いたい魔法、と言われてどうして槍を手元に戻す魔法が発現したのか疑問だったんだが…君の大切なものなら道理だね。」
「………………あぁ。」
大切に槍を握りしめる姿は、僕の予想を裏付ける証拠だった。
彼はロンギニウスが聖槍だから重宝しているのではない。
恐らく槍の使い方を教わった恩人に譲り受けたからこそ、それほどまでに扱っているのだろう。
「うん。いいね。『ロンギニウス』か。良い魔法だ。」
「そ、そうか。良かった。俺もカッコいいって思ったんだ。」
照れくさそうに話すレスト君。
彼の魔法『ロンギニウス』。それはまさに、彼にぴったりだ。




