6.おじさんは魔法を教える
魔法を使うため、僕たちは宿から離れて出会った場所である草原へと移動した。
「確か魔法ってのは魔素を使うんだよな?……俺に使えるのかな。」
レスト君は到着するなり、自信なさげに言う。
「大丈夫。君にも使えるさ。それに、魔素の生成は無意識下にやっているんだよ。臨戦態勢にでもなれば体が生成を始めるんだ。」
「?でもさっきは人によって生成方法が違うって…。」
僕の言葉をよく聞いてくれていたらしい。確かに彼の言う通りの発言をした。
「そうだね。正確にいえば効率のよい生成方法が違うんだ。だから、基本的なのは変わらない。」
「つ、つまり?」
「つまり、緊張状態で無意識に生成するというのは誰でも一緒ということだよ。」
「…………なるほど。」
なるほど、とは言うものの眉間による皺は説明を噛み砕くのに精一杯といった感じだ。
「まぁ、ものは試しさ。レスト君。構えてご覧。僕を魔族だと思うんだ。」
レスト君は律儀に槍を構える。研ぎ踏まされた隙のない体勢。誰に習ったかは知らないが、立派な形になっていた。
「そうそう。いい感じ。これで魔素は生成されているよ。あとは魔法を使うって意識をするんだ。」
「……魔法を使う………ど、どんな?」
「それは君が考えるのさ。使いたい魔法、使えそうな魔法、それをイメージするんだ。」
「……………使いたい魔法……。」
だが一向に変化は起きない。
まさか魔素が生成されていないのか。いや、それはない。
だとすると、何故何も起きない。考えられるとするならば、レスト君の魔法には発動条件があるのかもしれない。無意識に条件を課して魔法を使うものはよく居る。
「レスト君。僕は今から君の敵だ。」
「は?」
「『サーチアイ』!!」
僕の魔法『サーチアイ』。周辺一帯を見取り図のように線画にして視界を書き換える魔法。それにより、相手の状態や弱点を事細かに知れる。
「!?おい!!」
レスト君の姿が一本の線になる。どうやら右肩を怪我しているようで、左と比べてぎこちない動き。そこが弱点だ。
僕は彼の右肩を押し込む。拍子にバランスを崩したので、それを隙としてレスト君の槍を奪う。
「か、返せ…!」
「無理だよ。返してほしかったら自力で頑張らないと。」
「っ!」
煽りに乗ったレスト君は飛び掛ってくる。が、避けるのは容易い。
「くそっ!」
「諦めるかい?」
「諦めるわけ、ねぇ!」
僕は迫りくる手を避け続ける。このままでは槍が持ち主のもとに戻ることはないだろう。
なんて、思っている矢先。
「かえ、せ!!」
「!」
僕を捕らえようとする手。その手にはいつの間にか槍が握られていたのだ。
「……………あ……?」
行った本人も無自覚だったようである。
「なるほど。これが君の魔法か。」
「これが、俺の?」
ものを引き寄せる魔法。あるいは自身の持ち物を移動させる魔法。
何れにせよ、レスト君は魔法が使えないわけではないのだ。
「おめでとうレスト君。さ、まずは名付けでとしようか?」
魔法を使えるようになった一歩目。魔法の名付けを始めよう。




