4.おじさんは自分探しをする
変わらずレスト君が寝泊まりする部屋にて。僕と彼はここ数十分、変わらぬポジショニングのまま話をしていた。
そしてふと、レスト君が口を開く。
「そういやよ。……おっさん。俺と旅するって言ってたけど行き先とかどうするんだよ。」
「行き先?特にないよ。レスト君についていくよ。」
「つ、ついてくって言っても俺も特に目的地なんてねぇぞ…?」
「それは奇遇だね。ところでレスト君はどうして旅を?」
今まで聞いた話では、彼は魔素すら知らずその槍一本で魔族と戦ってきた。はっきり言って危険、無謀。それほどまでに旅にこだわる理由があるのだろうか。
「……それは……強く、なりてぇからだ。」
「強く?」
「あぁ。俺は強くなりてぇ。誰かに守られるような弱いままでいたくねぇ。」
誰かに守られる、というのは悪いことではない。見るに、レスト君はまだ子供だろう。少年が誰かに守られること。それを誰が責め立てよう。
だがきっと、彼にとってはそういう話ではないのだろう。
「そうかい。強く、ね。じゃあ僕も同行者としてできる限りのことは協力しよう。」
「お、おぅ。…………ありがとう。」
「いやぁ。君のありがとうは身体に染みるねぇ。」
「な!?ば、馬鹿にしてんのか!?ならもう言わねぇ!ありがとうなんて言わないからな!?」
「そんな。言っておくれよ。」
レスト君は恥ずかしげに顔を赤くして口を開閉していた。彼のオーバーなほどの一挙手一投足は視界にいれるだけでも愉快だった。もちろん、良い意味で。
「つぅか、おっさんこそなんで旅してんだよ。自分探しか?」
「おぉ。正解。言う通り、自分探さ。僕もこの歳になって自分を見失ってしまってね。ゴミ箱の中、ベットの下、色々探したんだけれど見つからなくてね。」
「そ、そりゃあそんなとこにはねぇだろ…。」
それは分からない。案外、身近なところに自分を象徴する何かが隠れている可能性だってある。
まぁ、僕の場合はそうでないと考えたから旅に出るわけだが。
「ふぅん。でも、自分探しか。悪くねぇな。俺も手伝ってやるよ。」
「それはありがたい。じゃあ、早速レスト君のベットの下でも物色させて貰おうかな……。」
「だからそんなとこにはねぇだろ!?」
「いやいや分からないよ。もしかするとレスト君のお宝でも眠っているかも…。」
「眠ってねぇって!隠すとしてもベット下はねぇよ!」
「へぇ。それじゃあ別のところか。さて、どこかな。」
「あ!?おいやめろ!人の部屋あさるな!!」
僕の予想としてはベット下でないのなら、引き出しだろう。鍵のかかっているところが特に怪しい。
ベット下と鍵のかかった引き出しほど、青少年の味方はいないのだから。




