3.おじさんは答える
レスト君が泊まっている部屋。木の香りが漂い続ける一室の中で僕は立っていた。
一応、簡易的な机と椅子はあるのだが、如何せん一つしかない。そして部屋の主であるレスト君が座る素振りもないので、僕も立っていることにしたのだ。
「それでレスト君。何か僕に聞きたいことはあるかな。」
話を戻す。もとより、僕はレスト君の疑問、全てに答えようとしていたのだ。
「聞きたいこと……。」
レスト君は困ったように眉を寄せた後、おずおずと口を開く。
「その……分からねぇことが多すぎて何を聞けばいいか分かんねぇ……。」
「あー。あるよね。そういうの。うーん。それならこうしよう。気になったことがあればその度に聞いてくれ。そうしたら僕が答えるから。」
「あ、あぁ。…………ありがとう。」
この子は乱暴な物言いをするが、礼はしっかり言えるようだ。中々教育が行き届いている。
「ところで、僕からも質問いいかな。」
「おう。俺に答えられるものならなんでも。」
控えめに答える彼へ、僕は先ほどから不思議に思っていたことを口にする。
「君は魔法を使ったことがない。なら、どうやって魔族に対抗していたんだい?魔法を使わなければとてもじゃないが魔族と戦えないよ。」
「それは…こいつのお陰だ。」
そう言って前に突き出したのは背負っていたもの。長槍だった。少し古びれ傷のある槍はレスト君ほどの背丈を持っていた。
「槍かい……これだけで魔族と…。その戦い方は誰に習ったんだい?まさか独学?」
「…………とんだお人好しがいたんだよ。そいつに教わった。」
「へぇ。そりゃあ凄い。ぜひ会ってみたい。」
僕の言葉で僅かに身を固くしたかと思えば、レスト君は大きく身振りをする。
「はっ!合わせるわけねぇだろ。どうせおっさん、その人にセクハラでもかますんだからな。」
「セクハラ…?僕が?そんなことしたこともないしするつもりもない。」
全くとんでもない。レスト君の言い方では、まるで僕が前科ありのようではないか。心外である。
「したことない!?嘘だろ!さっき俺にしてたじゃねぇか!」
「さっき…?さぁ。」
「さぁ、じゃねぇよ!さっき、俺にスリーサイズを教えるだなんだって!あれ!セクハラだからな!!」
セクハラ。あれが。
僕はただ善意でレスト君の知り合いであろうことを教えようとしていただけなのだが。
それが、セクハラ。ただの親切心だったが。
「僕は悲しいよ…。」
「……………もしかして、自覚なかったのか…?なら、仕方ねぇ…か…?その。責め立てて悪かったな。」
「いいよいいよ。代わりにレスト君のスリーサイズ教えてくれるなら。」
「だからそれはセクハラだっつってんだろうが!!」
セクハラ。セクハラ。この数時間で浴びるほどこの言葉を聞いた。僕の知らぬうちに、世間というのは堅苦しくなってしまったらしい。




