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おじさんは放浪中!  作者: とんぼ。


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24/25

24.おじさんは夢想する

 僕の前に立つサヤ君には、先までの穏やかさはない。


 ただ鋭い瞳をこちらへ向けるだけだ。


 「それで。サヤ君。僕にお話かい?」

 「………えぇ。そうよ。単刀直入に聞くわね。発見された男を殺したのは貴方?」

 「………………。」


 宣言通り、その疑問は真っ直ぐ告げられた。故に、僕も嘘偽りなく答える。


 「うん。そうだよ。」

 「……………そう。」


 サヤ君は静かに相槌を打つ。かと思えば、僕の襟首を力強く引っ張った。体幹がある方ではないので、風の向くまま、彼女の力のまま身体が動く。


 そして、息のかかるほど至近距離でサヤ君の瞳が僕を映す。


 「どうして。どうして、あんなことしたのよ。まさか、嗜虐趣味ってわけ?」

 「ちがうよ。僕の趣味じゃない。ただ…ケジメをつけてもらっただけさ。」

 「ケジメ…?」

 「そう。ケジメ。」


 ケジメをつけてもらった青年を思い出す。


 彼には彼の事情があったのかもしれない。金を欲する理由があったのかもしれない。だが、それはそれとして、他者を害する行為の正当化などあり得ない。


 「彼はレスト君の槍を奪おうとした。殺してでもね。人の命を奪おうとして自分が奪われるのは想定していないなんて、馬鹿な話だろう?」

 「……………。」


 サヤ君は黙る。そして、静かに呟いた。


 「そんなことして。あいつは喜びやしないわよ。」


 確かにそうだ。僕のこの行為をレスト君は喜ばない。嫌悪すら覚えるだろう。だが。だとしても、僕はあの青年にケジメをつけさせなければならなかった。そうしなければ、ならなかった。


 「そうだね。けれど、僕はやはりあの選択を悔いない。」

 「なんでよ。」

 「それは…レスト君しいてはサヤ君のためさ。」

 「………………は?」


 呆気にとられたのか、襟を掴んでいた手が緩む。呼吸が少ししやすくなった。


 「私達のため…?なに、言ってんのよ。」

 「いいかい。サヤ君。」


 僕は僅かに屈んでサヤ君の顔を見る。怯えともとれる表情だった。が、それでも構わない。


 「君たちはまだ若い。若さというのは武器だ。年老いなければ過ちを認め、直すことが出来る。そして何より君たちはエネルギーに溢れている。愚直なほど前向きで、眩しいほど青い。だからね。僕は君たちのエネルギーを、輝きを、守りたいんだ。」

 「………………。」


 後ずさる彼女を追わない。ただ、僕は僕の夢、あるいは僕の戯言を口にする。


 「そのためには、あの青年のような存在はあっちゃいけないんだ。君たちの先行きを害してしまうような、そんな存在は。」


 恐らく、僕の心の内全てをサヤ君は理解できないだろう。


 僕がどれほどレスト君に魅せられたのかも。しかし、理解をしてほしいわけではない。


 納得。そのひと言さえあればいい。


 「だからね。僕はこれからも続けるよ。君たちと旅をして、ね。」

 「……………………そう。」


 サヤ君は瞳を鋭くして、冷たい表情へとなる。


 「貴方の考えはわかったわ。でもね。だからといって私の考えも変わらないわ。貴方のその行為、私は認めない。そんなこと、私のためでも、ましてレストのためにもならない。」

 「そうかい。」

 「まぁ、いいわ。旅自体は続けるもの。だから、普段通りいきましょう。私も貴方がおかしなことをしなければ普段通り過ごすわ。」


 普段通り。つまりは、このことをレスト君へ告げるつもりはないらしい。それは彼への気遣いか、ほかの何かか。僕には分からないが、何れにせよ言う通りに普段と変わらぬ態度を取るつもりだ。


 レスト君とサヤ君。先ある彼らの為にも。

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