23.少年は安堵する
青年を始末したあと、僕はテントへ戻る。
『サーチアイ』をしたとき、レスト君とサヤ君の安否は確認できた。どうやら戦闘があったようだが、2人は無事だ。
ならば、問題はない。
そう思い、テントで横になる。
しばらくするとバタバタと足音がした。知っている足音。少なくとも警戒をする必要はないもの。
「おっさん!無事か!」
急ぎ入ってきたのはレスト君だった。その後ろにはサヤ君もいる。
「見ての通り無事だよ。あ、いや。無事ではないかもしれないね。腰が……」
「ぎっくり腰のことは聞いてねぇよ!」
突っ込みつつも、レスト君は胸をなで下ろす。隣のサヤ君もまた小さく息を漏らした。
「レスト。おじさんは何ともないみたいよ。」
「そうか。ならよかったけどよ…」
「二人慌ててどうしたんだい?もしかして僕が恋しくなったとか…?僕も君たちが恋しくなって、『サーチアイ』で探してたところだよ。相思相愛ってやつだね。」
「ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!」
「そうよ!勘違いも甚だしい!」
2人はなんとも手ひどい態度。だが、僕を心配していたことは事実なのだ。これは覆りようがない。そのことがたまらなく嬉しかった。
レスト君は紅潮した顔を小さく振りながら、あくまで冷静に言う。
「あのな。近くで妙な死体が見つかったらしいんだ。噂の段階だけどよ…。指を全部へし折られたみてぇで…。」
「へぇ。それは大変だ。」
「………………。」
先までの雰囲気は傾き、しんとしたものとなる。
ふと、視線を感じた。それは、サヤ君のものだ。彼女はじっと僕を見る。疑い深く。用心深く。
僕はそれに気付いたが、何か言うことはない。
「いやぁ。怖いね。レスト君とサヤ君は何ともなかったのかい?」
「あぁ。俺たちは…まぁ何ともねぇよ。………にしても悪趣味な奴だな。わざわざ指を折って、それから殺すなんてよ…。」
その言葉に反論もない。
真っ直ぐなレスト君はそう思った。それなら、きっと尊ばれるべきものである。
そんな中。サヤ君があ、とわざとらしく声を出す。
「レスト。私、髪留めを落としたみたい。拾ってきてくれる?」
「?なんで俺が…」
「だって怖いんだもの。ね。拾ってきてちょうだいよ。そうだ。今度串焼きでも奢って上げるわ。」
「む。しょーがねぇな。いいぜ。」
「ありがとう。頼んだわよ。」
レスト君は案外チョロい。いや、案外ではないか。ここ数日で彼がだいぶ流されやすいことは判明している。
そして。残されたのは僕とサヤ君だけ。
「さて。サヤ君。僕に何かお話かな。」
「……………えぇ。そうよ。」
サヤ君は一歩踏み出す。その顔にはレスト君へ笑いかけていたような柔らかさは感じられなかった。




