22.青年はケジメをつける
頭を抱えてしゃがみ込む青年を見下ろしながら、口を開く。
「僕はお喋りだからね。特別に教えてあげよう。」
青年と目線が合うように、僕もまた膝を折る。そして、彼の顔を見る。
苦痛、不安、無理解。まぜこぜの感情が噴き出していた。
「僕の魔法『サーチアイ』は周囲の物、全てを見取り図のように俯瞰することができる。………それを君にかけた。それだけだ。」
見取り図のように、と説明した通り『サーチアイ』を使用したあとの視界は線のみの世界になる。
言ってしまえば簡単だが、それだけで終わりではない。
突然見える世界が変わるのだ。慣れるまではマトモに立つことすらままならないだろう。
人によっては酩酊した状態のように視界が歪んだり、まっすぐ歩くことすらできないのだから。
「……さて。それで。」
「!」
本題に入ろうと、青年の指をそっと握る。
「君は言っていたね。レスト君を殺してでも槍を奪うと。」
「そ、それがなにさ。もしかして、人殺しはよくないなんて、綺麗事言うつもり?」
「まさか。」
この状況でも啖呵を切る青年に少し感心する。だが、その威勢もいつまで続くかは分からないが。
「僕はね、道徳を説きたいんじゃない。聞いているのは覚悟さ。」
「かく、ご…?」
「そう。」
握っていた指の関節。そこを力を入れて上へと引っ張る。
「君は一人の命を奪ってでも目的を果たそうとした。それは結構。けれど、逆は?君が返り討ちにあう可能性は?もちろん考慮していただろう?」
「…な、……ぁ゙、!?」
まずは一本。人差し指を上へと折り曲げる。小さく、音がした。
「覚悟とケジメはセットだ。君はいま、目的を果たすのに失敗した。なら、ケジメをつけないとね。」
中指へと手を伸ばす。二本目。
「ひ、ッ、やめ、」
先までの威勢はどこへやら。青年は目尻に涙を浮かべて、僕を見る。まったくもって無意味なことに。
「君、歳はいくつだい?子供、という歳じゃないだろう。なら、自分の尻ぬぐいは自分でしないとね。」
三本目。指が青紫色に変貌し始める。
そこで、青年の意識は途絶えた。
たかが指三本。たったそれだけを折られた痛みで気を失ったのだ。
「起きて。まだケジメはつけ終えていないよ。」
目を覚まさせるために、四本目と五本目を一気にいく。
「ッ、がぁ、!」
目が覚めたようだ。
残り五本。それが彼の残りのタイムリミットである。




