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おじさんは放浪中!  作者: とんぼ。


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20/25

20.少女は立っていた

 レストが男の腕を握っている。


 それでもなお、男は余裕を崩さない。ように見えた。


 「はっ。お嬢さんが弱くない?その証拠はあるのかね。現に彼女は地面にはいつくばっている。それは弱さの証拠じゃないがね?」

 「ちげぇな。」


 間髪入れずに首を振る。


 「こいつは弱くなんかねぇ。だって、まだ諦めてねぇから。」

 「………………。」


 諦めていない。レストは確かにそう言った。サヤは、地面に這いつくばり己の技でも太刀打ちできなかった少女は、決して諦めていないと。


 「………………なんで。」


 その疑問は男からではなく、サヤ自身から発せられた。


 「なんで、そう思うのよ。……………私は弱いわ。その男の言うとおりよ。だから、もう…」


 諦めているのだ。


 続けようとした言葉は、レストに優しく否定された。


 「ちげぇな。じゃあ、お前はなんでここにいんだ。」


 サヤがこの場にいる理由。それはただひとつ。特訓をしようと思ってのことだ。


 ならば何故、特訓を行おうとした。


 「……………それ、は………」


 理由など明らかだった。


 強くなりたいから。未だ、自分へ期待をしていたいから。だから、彼女はここにいた。

 諦め悪く、情けなく。けれど、やはり彼女はここにいた。


 「…………私の力は…まだまだこんなもんじゃないって…」


 サヤは震える足を鼓舞して立ち上がろうとする。だが、不思議と柔らかくなった地面に足を取られて動けない。


 「きっと、もっと強くなれるって…いえ、違うわね。強くなってやるって、思ったからよ。」


 その答えに対して、レストは満足気に笑った。


 「そうか。なら、こんなとこで寝っ転がってる場合じゃねぇな。」

 「…………ふ。……えぇ。そうね。」


 サヤの瞳に光が戻る。いや。初めから光は灯っていたのだ。少し弱まっていただけで、確かに強い意志と共に光はあった。


 「……………な、なんだがね。たかが意思表示の一つで、私に勝てると思っているのがね。」

 「意思表示…?貴方はまだ、そう思っているの。」

 「何……?」


 男は僅かに後退りする。だが、彼の優勢は変わっていない。そのはず。だというのに、この少女の余裕はなんだ。


 答え合わせはすぐにやって来る。


 「まだ気付かないのね。」


 その瞬間、地面へ埋まっていたサヤの足が引き上がる。土塊がパラパラと舞う。


 「なっ!?」


 男の魔法、『バウンス』。対象を柔らかくする。地面へかけることで、相手の足を取ることが出来る。のだが。

 

 サヤの『風魔脚(ふうまきゃく)』の前では無意味だった。


 彼女はその魔法で脚に風を纏う。脚の周辺に漂う風は、激しく吹き荒れて地中の砂を弾いていったのだ。


 「私は勝つわ。貴方に。こんなところでモタモタしてられないもの…!」


 地中から出た足。その周囲には轟々と風が。


 「私の技が貴方に届かないですって…?なら、届かせてみせるわ!『風魔脚(ふうまきゃく)』!!」


 サヤの足が、男の腹に突きささる。


 そこに立っていたのは、ただの少女ではなかった。強さを追い求め続ける意志を持った人間がそこにはいた。

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