↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おじさんは放浪中!  作者: とんぼ。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/25

19.少女は弱い

 サヤの一家、リンドウ一族は屈指の強さを誇る血族だった。


 小さな里に身を寄せ、山々で修行を行い己を鍛え抜く。それがリンドウ一族だった。無論、サヤとて例外ではない。


 弱ければ生きる意味なし。


 リンドウ一族のその思想は、かつて魔族に脅かされていた頃からの名残であった。その実、彼等は他の人々を見下していた。また魔族に虐げられたいのか。支配されたいのかと。

 

 呑気な群衆へ侮蔑の念を送っていたのだ。

 

 それがなせるのも強さ故だ。


 なのだが。


 「弱い。」


 サヤが覚えている母の言葉。だったひとこと。物心がついた時に、初めて聞いたのがそのひとことだった。


 「サヤ。貴方は弱い。弱すぎる。分かる?弱いリンドウの人間なんてのはいないの。つまり、貴方はリンドウの人間じゃないの。」

 「…………………。」


 そんなはずはない。


 サヤは母の言葉が信じられなかった。


 修行は人一倍している。血筋の問題でもない。

 

 故に、自身が弱いなどあり得ないと。


 きっと、何かの間違いなのだと。


 まだ、力が芽吹かないだけ。まだ、真の力が発揮できていないだけ。それだけだ。


 5歳の彼女はそう思った。10歳の彼女もそう思った。12の彼女も、13の彼女も、14の彼女も。


 そして今も。だが、一向にその時は現れない。サヤ・リンドウの真の力が発揮される等という時は、やって来ない。


 「…………………。」


 本当は気が付いていた。


 自身の力を。その上限を。


 聖槍(せいそう)を持つ少年に負けた時、それは確固たる事実となった。


 サヤはあの時、負けた。少年に。歳も変わらぬはずの、物も知らぬ少年に。


 「………………違う。弱くない。私は弱くなんかないわ。だって、リンドウの人間なんだもの。あり得ない。あり得ないのよ。」


 言い聞かせるように繰り返す。そして特訓という名の逃避へと繰り出す。


 『風魔脚(ふうまきゃく)』。それが彼女の魔法の名。魔族すら蹴散らす風を纏うもの。しかし、それだけ。早いだけの脚は彼女を現実から逃避させるのに役立つが、追い求める強さには、てんで役立たなかった。


 「悲しいほどに弱いがね。その脚も、技も、私には遠く及ばないかね。」


 サーカス団の男がサヤを見下す。地面に伏すサヤを。


 「…………。」


 違うと。弱くなどないと否定をしたかった。しかし、出来る材料などない。


 サヤ・リンドウは正真正銘、力の無い弱者だったのだから。


 「……………私、は……」

 「おや。泣くのかね。それはいい。涙は弱者の特権だがね。さぁ、無様に泣くといいがね。」

 

 男が歩み寄る。そして、持っていた三日月型のナイフをサヤへと振り下ろす。


 月明かりに照らされる刃。だが、それは彼女を傷付けることはなかった。


 「弱者?こいつが?それはちげぇな。」

 「「!」」


 男は勿論、サヤも乱入をした第三者へ驚きを隠せなかった。


 やって来た少年。レスト。彼は身を固くする2人に構わず続ける。


 「こいつは強ぇよ。お前の言う弱者なんかじゃねぇ。」


 レストは男の腕を強く握りながら、愚直な瞳でそう告げるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。