17.少年と少女は意気投合する
演目も終わり、日が暮れた頃。
アリーたちは宿泊用に設けてある『第2テント』へ向かった。そこは男女共に分かれており、眠るスペースほどの小さなテントが点々としていた。
アリーとレストは男性用のテントへ。サヤは女性用のテントへ向かった。
『第2テント』内は狭く、腰を屈めかければ入れないほどだ。
「ふわぁ。それじゃあお休み。レスト君。」
「おう。おやすみ。おっさん。」
アリーは簡易的な敷布団に寝っ転がると、すぐさま寝息を立てた。年のせいか、それとも単純な疲れかは定かではない。
しばらくするといびきがした。鼻や喉の奥から響くような、かなりの大きさだ。
「………………うるせぇな………。」
あまりの喧しさに、レストは眠れないとテントを出る。
夜風が吹く。身体に纏わりつくような不思議な風。彼が今の今まで感じたことのなかった風。
それは、この世界ではなんの変哲もない自然現象だった。
居心地の悪さを感じつつ、『第2テント』付近を歩いていると、サヤの後ろ姿があった。何やらひとりでにつぶやいている。
「…………うわ。私は、………なんかないわ。」
彼女はどこかへ向かっていらしく、『第2テント』群から離れようとしている。
「おい。サヤ。どこ行くんだよ。」
その声に驚いたのも束の間。サヤはすぐさま表情を取り繕う。
「………別に。特訓よ特訓。」
「特訓って…こんな夜更けにか?」
「そうよ。何か文句でも?」
足を止めずに、言い放つ。
「文句って…まぁ文句だな。こんな暗いんだ。明日にしろよ。」
「貴方、私の親か何か?随分、過干渉じゃない。」
その言葉に、レストは立ち止まる。
彼は親などではない。だが、少なくともサヤの知り合いではある。同じく旅をする仲間である。
「親じゃねぇけど…仲間みてぇなもんだろ。」
「はっ。仲間ね。青いことを真正面から言うのね。あのおじさん譲りかしら?」
「お、おっさんは関係ねぇよ!つぅか、あそこまで小っ恥ずかしいことは言わねぇよ!」
「あら。どうかしらねぇ。貴方も歳を取って若人がどうとか語り出すんじゃないかしら。」
確かに、おっさんもといアリーはいつも若人がどうとか、そんなことを語っている。それと、自身の身体の不調だとか。
だが、レストはそうはならない。と、思っている。自信はないが。
「そ、そんなふうにはならねぇよ。………たぶん。」
「自信なさげねぇ。」
「それよりあんま言ってやるなよ。おっさんのこと。あいつ、泣いちまうぞ。」
「泣くって…そんなわけ……いえ。あるわね。」
「…………だろ。」
アリーは歳の割に面倒な性格だった。
年寄りを自称するが、いざ指摘すればいじけて座り込む。あれほど扱いにくい年寄りはいないだろう。
と、2人は意気投合する。その間にも、夜は刻一刻と深まるのだった。




