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おじさんは放浪中!  作者: とんぼ。


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15/25

15.おじさんは食す

 僕たちはサーカス団が設営するテントのうち、観光客が足を休められる場所にいた。テント前には『第1テント』と看板がある。


 その中は簡易的な休憩場所になっており、細長い椅子とテーブルが並べられている。


 底に腰掛け、レスト君が買ってき串焼きを早速頂く。


 「うーん。やっぱり串焼きはいいねぇ。」


 肉はもちろん、タレが良いのだ。ほどよい塩気と粘り気のある液体。それこそ串焼きに適したタレである。


 「ん。中々ね。まぁ私はもっと生焼けのほうがいいけど…。」

 「生焼けって腹壊すぞ…?」

 「レアって意味よ!レア!それに魔族の肉はそんなに腹なんて壊さないわよ!」


 サヤ君はまたレスト君へ食ってかかる。だが、対するレスト君は彼女の言葉に対して驚きを見せた。


 「ま、魔族の…肉…?」

 「?えぇ。そうよ。」


 そういえばレスト君は知らないことが多いのだった。彼の知らないことを僕が教える。この旅はその為でもある。  


 「サヤ君の言う通り、これは魔族の肉さ。」

 「魔族って食えんのかよ…。だって、あの、スライムみてぇなやつとか、つの生えてるやつとかだろ…?」

 「うん。それでも食べれるんだ。そもそも魔族も元は人だしね。」

 「!?そうなのか!?」


 レスト君は声を上げる。拍子に持っていたくし焼きを落としそうになった。


 「元は人って言うけれど…魔族の先祖は魔物と交わった奴らよ?正気じゃないわ。少なくとも同じ人だったとは思えないわね。」

 「そうは言うけど、生物学的には先祖は一緒さ。」

 「まぁ、それはそうだけど……。」


 サヤ君は不満げだった。それも無理ない。人が魔族を食すように魔族も人を食す。というか、魔族は人が主食だ。そんな奇妙な食物連鎖をする生き物同士が同じ祖を持つ、とするのは受け入れがたいのかもしれない。


 「……………俺はゲテモノ料理を食ってたのか……。」

 「ゲテモノだなんて変なこと言うのね。別に、今まで口にしたことぐらいあるでしょう?」

 「ね、ねぇよ。」


 その返答にからかいすらもない、声がした。


 「本当に?」

 

 彼女の顔は真剣そのものだった。


 「本当だ。………変なのは自覚してる。」

 「………………そう。」


 サヤ君は眉をひそめた後、僕の側に来てそっと囁く。


 「ねぇ。おじさん。もしかしてレストの奴、記憶喪失とかその類いの…?」

 「僕もそう思ったんだけどね。そうではないらしい。」

 「そうだよ!記憶喪失じゃねぇ!ただの無知だ!悪かったな!」


 どうやら聞こえていたらしい。激しい反論がやってきた。だが、僕としては知らないことは何も問題があるわけではない。


 のだが。サヤ君はそうでないらしい。


 「へぇ。貴方なぁんにも知らないのねぇ。ふぅん。」

 「嫌な言い方だな。忘れんなよ!お前、俺に1回負けたんだからな!」

 「なっ!?1回でしょ!それにまぐれよ!まぐれ!」

 「試してみるか?」

 「はっ!望むところよ!」


 2人はすぐに血気盛んな方向へと行ってしまう。これも若さ故か。いずれにせよ、こんなところで大騒ぎを起こしてほしくない。せっかくのサーカスなのだから。


 「まぁまぁ2人とも。その辺でッ!?」

 「おじさん!」

 「おっさん!」


 止めようとした矢先、僕の腰はうねりを上げる。再び、ぎっくり腰という名の衝撃がやって来たのだ。


 「…………歳食うってのは大変なんだな……。」

 「えぇ…。そうみたいね。」

 「憐れむのは止してくれよ!!」


 歳を取れば良いことだってあるはずだ。そのはずだ。そう思って、僕は若者2人に反論するのだった。

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