13.おじさんは喚く
紆余曲折あったものの、取り敢えずの目的地は決まった。ずばり、サーカス団だ。
僕たちが目指すサーカス団は各地を旅しており、時々テントを張ってひとつの場に留まる。今回はそれを狙ってサーカスを見に行くというわけだ。
レスト君が泊まっていた街。そこからしばらく歩いた広い草原に、サーカスのカラフルなテントがあった。
ひとつ、ふたつ、と大きなテントにそれから小さなテントが寄り添うように建てられている。
大きなテントはもちろん、公演用。そして小さなテントは団員の寝泊まりと一般客向けのゲストハウスを兼ねているのだ。
「お。練習してるみたいだぜ。」
ちょうどレスト君の視線の先には、大きな玉を器用に乗りこなす団員の姿があった。
「へぇ。すごいのね。」
そうして眺めているとこちらに気付いた団員が笑いかけてきた。
「お客さん!よかったらどうです!」
「良いのかい?ならお言葉に甘えようかな。」
僕は団員の勧められるまま置かれたボールへ足を乗せてみる。
「お、っと、と。」
やはり一筋縄ではいかないようで、弾むボールから足裏が離れてしまう。そして、地面へと尻もちをつく。
までは良かった。
「あ。」
尻が硬い地面と衝突する音。だけでない。それだけでなく、確かに僕は嫌な感覚に陥った。
「?どうかしたの?」
「どうしたんだ?」
レスト君とサヤ君が僕を上から覗き込む。
本来であればどうともしない、と啖呵を切りたかったのだが。そうしたかったのだが。
「…………し、が……。」
「「?」」
「こしが………。ちょうど、ぎっくり、ごしが……」
僕の言葉に2人はしばし黙り込む。
次に現れたのは同情の眼差しだった。
「おっさん……やっぱりお前歳なんだな…。」
「同情するわ……。歳はとりたくないものね……。」
「ふ、2人とも!そんなこと言っているぐはいなら手を貸してくれないかい!?僕は今、到底ひとりじゃ立てないんだ!!」
「はいはい。レスト。そっち引っ張りなさい。」
「あぁ。」
そうして伸ばした手が握られる。
素直なのは嬉しいが、それはそれとして釈然としなかった。
普段から年寄りを自称しているが、他者からそう認識されるのとはまた話が別なのである。無論、面倒なのは理解している。
「………………はぁ。」
「そう落ち込むなよ。おっさん!大丈夫だって!」
「えぇ。そうよ!どうせみんな貴方みたいになるんだから!」
「それ何の慰めでもないぞぉ!」
喚く。
人はどうして老いるのだろうか。そんなおセンチな気分になりながら、痛めた腰をさするのであった。




