12.おじさんは提案する
レスト君と僕。それから襲撃をしてきた少女。僕ら3人は晴れて旅をする仲間となった。
「それで、君の名前は?肝心なことを聞いていなかったよ。」
僕の問いに少女はすんなりと答えた。
「サヤよ。言っておくけど馴れ馴れしく呼ばないでちょうだいね。」
そんなつっけんどんな言い口に、レスト君が言葉を返す。
「じゃあなんだ?サヤさまーってでも呼べば良いのか?」
嘲るような、なおかつ明確に挑発する意図を持った調子に、負けじと少女もといサヤは鼻を鳴らして言葉を重ねる。
「えぇそうしなさい。貴方は特に。生意気だもの。」
「生意気ぃ?お前、俺に負けたの忘れたか?」
「そ、それとこれとは話が違うでしょ!」
「そうだそうだ。そんな事を言っているともてないぞレスト君。」
「だからもてなくていいっつぅの!」
「だからおじさんは黙ってなさいってば!」
不思議なことに、2人は僕をなじるときはいっそう息が合ってしまうようだ。
仲睦まじいのは良いことだが、それはそれとして寂しい。
「…………そうだね。僕はおじさんだもんね…知ってるよ。でも好きで歳を重ねたわけじゃないんだ……。」
「あー!おっさんがまたへこんじまったよ!」
「な、なんでそんなにメンタルが弱いのよ!」
「僕はおじさんだから…へこみやすいんだ……。」
仰々しく顔を埋める。涙が出ることはないが、それはそれとして2人はかなり心配してくれているようだ。
その甲斐あってか、僕の心もだいぶ落ち着いてきた。
「ところでこれからどうする?」
「ど、どうって?」
突然落ち着いた僕に驚いたのか、レスト君は僅かに動揺しながら言葉を反復する。
「ほら。旅、するんだろう?目的地がないとつまらないと思ってね。しばらく目指す場所でも決めないかい?」
その問いかけに、2人はそろって首を捻る。どうやら行き先らしい行き先が思いつかないらしい。
だがこれはこれで好都合だ。
「特にないのなら、僕が案を出してもいいかい?」
「構わねぇけど、何処にいきてぇんだ。」
「それはね……ここさ。」
そう言って1枚のチラシを取り出す。
そこにはカラフルな文字と絵が載っかっており、大きく目立つところにはこう記してあった。
「サーカス?」
サヤ君が声を出すのと同時に、不思議な顔を覗かせる。
「おじさん、サーカスに行きたいの?」
「あぁ!そうさ!楽しそうじゃないかい?玉から玉に飛び乗ったり、猛獣を使役して火の輪を潜らせたり……!実はサーカスに入るのが僕の夢だったんだ…!」
奇抜な衣装を身に纏い、ステージ上でライトと視線を一身に浴びる。それはなんと気持ちの良いことだろう。
「へぇ。そうだったのか。ならいけんじゃねぇか?食費もかからなそうだしよ。」
「そうね。躾もそう苦労しなさそうだもの。」
「言っておくけど猛獣としてじゃないからね!?人としてだよ!!」
「なんだ。そうなのか。」
「あら。残念ね。」
全く2人は僕を何だと思っているのか。いま一度聞いておく必要がありそうだ。




