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おじさんは放浪中!  作者: とんぼ。


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10/25

10.少年は戦う

 「俺は…。」


 レスト君が言葉を必死に探す。


 僕は待つだけ。それだけだ。


 「俺は…強く、なりてぇんだ。………素性の知らねぇ俺を、助けてくれたあの人みてぇに…いや。ちげぇ。あの人に庇われるような弱ぇままじゃ嫌なんだ!!」

 「そうかい。」


 真っすぐな返答だった。混じり気のない純粋な彼自身の意思。願い。僕はそれが、ほんの少しうらやましく感じた。同時に、支えようとも。


 「はっ!そんなこと知らないわよ!強くなりたい?思うだけじゃ、雑魚は雑魚のまんまよ!」


 少女は痺れを切らしたのか、遂に戦闘態勢へと入る。


 だが心配はいらない。

 

 レスト君は決して弱くない。少なくとも僕はそう思う。


 「後悔させてあげるわ!それで、ボコボコにしたあとに槍を奪ってあげる!………『風魔脚(ふうまきゃく)』!!」


 右脚を折りたたんだかと思うと、次の瞬間にはそれが伸び、レスト君の頬を掠める。

 間一髪避けたが、彼女の蹴りは瞬きする間もなく成された技だった。

 

 「!?なんだ今の!?」

 「恐らく彼女の魔法だろう。おおよそ、速さをあげるものかな。」


 『サーチアイ』で少女を見る。点と線の世界。そこの中で、彼女の脚には風のようなものが纏わりついていた。あれこそ早業のタネなのかもしれない。


 「はっ!分かったところで対処出来るかしら!?」


 少女の脚技が次々と襲いかかってくる。上げた脚を下げることなく、二撃三撃と。

 ヒールのように僅かに踵が盛り上がった靴。当たればただじゃ済まない。


 「だそうだよレスト君。」

 「そうかよ。なら、俺もとっておきを見せてやる。」

 「とっておき?その隙だらけの格好が!?笑わせるんじゃないわよ!」


 少女はレスト君の持っていた槍を蹴り飛ばす。


 槍は空中へ舞う。少女はそれも構わず猛攻を続ける。槍は2人の後方で今にも地面へ落ちる。


 その時。


 「『ロンギニウス』!」


 槍が地面に接する直前。レスト君の呼びかけへ応じるように、自由落下の体勢を変えて不自然にも彼の手元へ飛び出す。


 「!?」


 レスト君と槍の導線上にいた少女。槍は彼女を邪魔だと言うように、脇腹へとぶつかる。

 

 「ッ!!」


 少女の腹に、槍の柄が当たった。


 咄嗟に脚を引っ込め、腹を擦る。その一瞬が、命取りである。


 レスト君は手元に戻った槍を携えたまま、相手の間合いに潜り込む。

 そして少女の頬の真横へ刃先をそっと沿わせる。決して傷つけることはない。だが、少しでも動けば死を意味するのだと。


 「…………まだやるか?勝負はついたぞ。」

 「…………………。」


 彼の言う通り2人の勝負は決した。


 レスト君と、彼の魔法。その勝利だ。

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