10.少年は戦う
「俺は…。」
レスト君が言葉を必死に探す。
僕は待つだけ。それだけだ。
「俺は…強く、なりてぇんだ。………素性の知らねぇ俺を、助けてくれたあの人みてぇに…いや。ちげぇ。あの人に庇われるような弱ぇままじゃ嫌なんだ!!」
「そうかい。」
真っすぐな返答だった。混じり気のない純粋な彼自身の意思。願い。僕はそれが、ほんの少しうらやましく感じた。同時に、支えようとも。
「はっ!そんなこと知らないわよ!強くなりたい?思うだけじゃ、雑魚は雑魚のまんまよ!」
少女は痺れを切らしたのか、遂に戦闘態勢へと入る。
だが心配はいらない。
レスト君は決して弱くない。少なくとも僕はそう思う。
「後悔させてあげるわ!それで、ボコボコにしたあとに槍を奪ってあげる!………『風魔脚』!!」
右脚を折りたたんだかと思うと、次の瞬間にはそれが伸び、レスト君の頬を掠める。
間一髪避けたが、彼女の蹴りは瞬きする間もなく成された技だった。
「!?なんだ今の!?」
「恐らく彼女の魔法だろう。おおよそ、速さをあげるものかな。」
『サーチアイ』で少女を見る。点と線の世界。そこの中で、彼女の脚には風のようなものが纏わりついていた。あれこそ早業のタネなのかもしれない。
「はっ!分かったところで対処出来るかしら!?」
少女の脚技が次々と襲いかかってくる。上げた脚を下げることなく、二撃三撃と。
ヒールのように僅かに踵が盛り上がった靴。当たればただじゃ済まない。
「だそうだよレスト君。」
「そうかよ。なら、俺もとっておきを見せてやる。」
「とっておき?その隙だらけの格好が!?笑わせるんじゃないわよ!」
少女はレスト君の持っていた槍を蹴り飛ばす。
槍は空中へ舞う。少女はそれも構わず猛攻を続ける。槍は2人の後方で今にも地面へ落ちる。
その時。
「『ロンギニウス』!」
槍が地面に接する直前。レスト君の呼びかけへ応じるように、自由落下の体勢を変えて不自然にも彼の手元へ飛び出す。
「!?」
レスト君と槍の導線上にいた少女。槍は彼女を邪魔だと言うように、脇腹へとぶつかる。
「ッ!!」
少女の腹に、槍の柄が当たった。
咄嗟に脚を引っ込め、腹を擦る。その一瞬が、命取りである。
レスト君は手元に戻った槍を携えたまま、相手の間合いに潜り込む。
そして少女の頬の真横へ刃先をそっと沿わせる。決して傷つけることはない。だが、少しでも動けば死を意味するのだと。
「…………まだやるか?勝負はついたぞ。」
「…………………。」
彼の言う通り2人の勝負は決した。
レスト君と、彼の魔法。その勝利だ。




