第225話 第二聖女38
翌日。
神殿の空気が、少し変わっていた。
白い廊下。
静かな祈祷室。
いつもと同じ。
でも。
(違う)
視線がある。
「聞きました?」
小さな声。
神官見習い同士。
廊下の端。
「南区の……」
「第二聖女様の件」
ボク達が通ると、少し静かになる。
でも。
(止まってない)
「……広がってますわね」
アデリナ様が小さく呟く。
「うん」
短く返す。
神殿内にも広がっている。
(南区だけじゃない)
「本当にやってたんだ」
「管理局と揉めてるって」
「配給止まってたらしいぞ」
断片が聞こえてくる。
でも。
(流れてる)
ロランスが少し落ち着かない様子で周囲を見る。
「ね」
彼女がボクに話しかけた。
「なんか……みんな見てない?」
「うん」
「怖い?」
「ちょっと」
ロランスに苦笑いを見せる。
でも。
「本当に大丈夫?」
「まあね」
(悪くない)
隠れてないから。
「第二聖女様」
侍女が小さく頭を下げる。
「昨日、南区から来た方々が……」
「来た?」
「ええ」
一拍。
「神殿へ直接、相談が」
アデリナ様と視線が合う。
(来た)
住民側から。
「内容は?」
「配給停止についてです」
「あと」
少し迷うように。
「管理局からの圧力についても」
ロランスが目を見開く。
「神殿にまで?」
「うん」
ボクは頷く。
(流れた)
もう。
(戻らない)
「現在、記録室で対応中です」
侍女が続ける。
「下級神官達も確認へ動いています」
アデリナ様が小さく息を吐いた。
「……早いですわね」
「うん」
ボクは少し考える。
管理局より先に。
噂が。
(広がった)
「ポラリス嬢」
アデリナ様が静かに。
「これでもう、“現場だけの話”ではありませんわ」
「うん」
「神殿側も巻き込まれた」
一拍。
「だから」
ボクは窓の外を見る。
「止めにくい」
もう。
南区の列だけじゃない。
商人。
孤児院。
住民。
神殿。
(増えた)
その時。
「第二聖女ポラリス・バルカナバード様」
後ろから声。
振り返る。
神官。
少し緊張した顔。
「ザスキア様がお呼びです」
空気が少し止まった。
(動いた)
ついに。




