第224話 第二聖女37
役人達が去っていく。
足音が遠ざかる。
ざわめきが戻っていって、周囲には話し声が聞こえていた。
(戻ってきた)
空気が。
ロランスが少し不安そうに周囲を見た。
「……それでも、やっぱり怖いよね」
「うん」
ボクは頷く。
当然だと思う。
相手は管理局。
止めに来ている。
でも。
(まだいる)
人は残っている。
列。
商人。
孤児院職員。
誰も帰っていない。
「……第二聖女様」
小さな声。
さっきとは別の男だった。
「俺も見た」
周囲が少し動く。
男は迷っていた。
でも。
「札持ってる奴だけ、奥から呼ばれてた」
「名前は?」
ボクは問いかける。
「知らねぇ」
一拍。
「でも、役人はいた」
アデリナ様が記録していく。
「日時は?」
「四日前だ」
「場所は南区配給所裏手で間違いありませんの?」
「ああ」
書かれていく。
残っていく。
「……うちも」
今度は女性。
「途中から急に並べなくなったの」
「前は違った?」
「違った」
「札がないなら待てって」
さらに。
「俺んとこも紙来た」
「南区管理の印付きだったぞ」
「配給量、途中から減った」
声が出てくる。
また一つ。
もう一つ。
ロランスが目を見開いていた。
「……増えてる」
「うん」
ボクは頷く。
(流れてる)
もう。
(一人じゃない)
アデリナ様が紙を整理しながら呟く。
「証言同士が繋がっていますわね」
「うん」
「時間も近い」
「流れも同じ」
商人。
列。
孤児院。
(全部)
その時。
「第二聖女様」
グレッグが、小さく声を掛けてきた。
「……これも出す」
紙。
折られている。
「それ」
「止められた時の通達だ」
ロランスが息を飲む。
「持ってたの?」
「出したら終わると思ってた」
一拍。
「でも」
グレッグは周囲を見る。
他の商人。
列の人達。
孤児院職員。
「俺だけじゃねぇなら」
沈黙。
(変わった)
流れが。
ボクは紙を受け取った。
「ありがとう」
短く。
アデリナ様がすぐ記録へ加える。
「日付も一致していますわ」
「うん」
ボクは頷いた。
(残る)
(広がる)
(止まらない)
もう。
一箇所じゃない。




