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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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222/226

第222話 第二聖女35

 翌日。

 ボク達は再び南区へ来ていた。

 配給列は、まだ長い。

 でも。


(回ってる)


 止まってはいない。


「先日よりは少し早いですわね」


 アデリナ様が列を見ながら呟く。

 ただ安心している感じじゃないけれども。


「うん」


 ボクも頷く。

 人が流れている。

 少しずつ。

 遅くても。


(残ってる)


 だから。


(今)


「ねえ」


 ボクは列の端に座っている女性へ声を掛けた。


「え?」


「少し聞いていい?」


 女性は少し警戒したようにこちらを見る。

 でも。


「あ……第二聖女様」


 すぐに頭を下げた。

 ボクの事、知っているんだ。


「別にいいよ」


 ボクは軽く首を振る。


「聞くだけ」


「……何を?」


「前」


 一拍。


「札、あった?」


 女性が止まる。

 少しだけ。

 周囲を見る。


(見てる)


 まだ怖いんだ。


「……あったよ」


 小さく。


「どんな?」


「紙……みたいなの」


「持ってる人、先だった」


「いつ?」


「三日前くらい」


 アデリナ様が横で書いている。

 記録するために。


「場所は同じですの?」


「う、うん」


「裏の方」


 ボクは頷く。


(残る)


 言葉が文字に記されていく。


「名前、書いていい?」


 女性が少し不安そうな顔をする。


「……大丈夫なの?」


 変なことに使われないか、心配しているのかな。


「残すだけ」


 だから少し笑みを見せて安心させる。

 短く返答しながら。


「消えないように」


「これは告発ではありませんわ。後で消されないための確認です」


 アデリナ様も説明した。

 女性は少し迷ってから、小さく頷いた。


「……ミナ」


 アデリナ様が記録する。


「ありがとうございます」


 静かに。

 それから周囲の人も反応して、何人か証言してくれた。

 次。

 ボク達は商人街へ向かった。


「また来たのか」


 店主がため息を吐く。


「聞く」


「……何をだ」


「止められた時」


 一拍。


「誰が来た?」


 店主が黙る。


「記録するだけだから」


「残す」


 そう伝えると、少しだけ空気が変わった。


「……南区管理の人間だ」


「紙も?」


「ああ」


「脅された?」


「営業停止ってな」


 一緒についてきたロランスが少し顔を曇らせる。


「酷い……」


「名前、残せる?」


 店主は苦い顔をする。


「……残してどうなる」


「増える」


 短く。


「同じ人」


「他にもいる」


 店主が止まる。


「……いるのか」


「うん」


 一拍。


「だから消えない」


 沈黙。

 やがて。


「……グレッグだ」


 店主が呟いた。

 アデリナ様が記録する。

 次。

 孤児院。


「最近また減りました」


 エルマさんが静かに話してくれる。


「どのくらい?」


「三日前から急に」


「連絡は?」


「ありません」


 ボクは頷いた。


(繋がる)


 全部。


「残しますわ」


 アデリナ様が書き込んでいく。


「日時」


「供給量」


「減少時期」


 一つずつ。

 ロランスが小さく呟いた。


「……増えてる」


「うん」


 ボクは頷く。


「一個じゃない」


 商人。

 孤児院。

 列。

 住民。


(広がる)


「ねえ」


 ロランスが小さく問いかける。


「これで変わるの?」


 問題が多いように思っているんだね。

 確かにそうだよね。


「変える」


 短く答える。

 だからこそだよ。


「消せなくする」


 ボクは記録紙を見る。

 名前。

 時間。

 場所。


(残る)


(繋がる)


(流れる)


 止める前に。

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