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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第217話 第二聖女30

 誰も、すぐには答えなかった。

 管理局側の男が、ゆっくりと息を吐く。

 机の上。

 指先が止まっている。


(詰まった)


 でも。


(終わらない)


「……拒否はしておりません」


 男は静かに答えていく。

 それでも慎重に。


「ですが」


 一拍。


「正式監査には手順があります」


 来た。


(逃がす)


「監査官選定」


「監査範囲確認」


「立会人調整」


「王国側承認」


「記録管理」


 一つずつ。

 積み上げていく。


「即時監査など前例がない」


 神官の一人が眉を動かした。


「加えて」


 男は続ける。


「現在、南区は不安定です」


「不用意な監査介入は」


「さらなる混乱を招く可能性がある」


 また戻した。

 不安定にしているのはどっちだろうね。


(混乱)


「ですので」


「正式手順に則った上で」


「慎重に行うべき案件です」


 静かに淡々と。

 でも。


(遅らせる)


 ボクは分かる。

 時間を作りたい。

 証拠を消すために。


「なるほど」


 ザスキア様は頷いていた。

 感情はない。


「では」


 一拍。


「監査は行うのですね?」


 男が止まる。


「……必要な承認が下りれば」


 言い淀んだ後に、濁した。

 王国側文官が視線を上げる。


「管理局としては反対ではない、と」


「ええ」


 男は頷く。

 神官が記録を取っている。


「正式手順を満たすのであれば」


(長い)


 ボクは思う。

 わざと長くしている。


(その間に消す)


 アデリナ様も黙って聞いていた。


「監査開始予定は?」


 王国側文官が問いかける。


「現時点では未定です」


 男は即答した。


「調整が必要ですので」


 空気が少し冷える。


(未定)


 つまり。

 今度は調整なんだ。


(引き延ばす)


「……なるほど」


 ザスキア様が、ゆっくりと頷いた。


「では」


 静かな声。


「神殿側より正式監査申請を提出します」


 空気が止まる。


「王国側にも協力を要請します」


 さらに。


「監査対象は」


 一拍。


「南区配給全体」


 管理局側の男の表情が、初めて少し崩れた。


(入った)


 深く。


「異論は?」


 静かに視線を向けていた。

 でも、逃がさない。

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