第198話 第二聖女11
ボク達は神殿に戻って、ザスキア様へ報告をすることにした。
「失礼いたします」
ザスキア様の執務室のドアを叩いて、扉が開く。
ボク達は中へと入っていく。
「来ましたか」
ザスキア様は椅子に座っていて、視線がそのまま来た。
「報告があります」
アデリナ様が先に口を開いた。
「ええ、聞きましょう」
ボク達は淡々と報告をしていく。
「南区の配給ですが、滞りがあります」
「把握しています」
すると、ザスキア様は即答した。
一瞬、ボク達は言葉が止まった。
「表の滞りは」
知っているんだ。
いや、ガワの部分は説明しなくても良いのか。
「内容を」
ザスキア様は促した。
「表と裏、二つに分かれていました」
「裏?」
少しだけ反応した。
「公式ではない列です」
「……続けて」
反応はまだ薄いものの、ボク達に話を続けさせる。
「配給対象が、選別されています」
アデリナ様が言葉を。
沈黙が流れる。
「札があった」
短くボクが補足する。
「それを持っている人だけ、先にもらえる」
「持っていない人は?」
ザスキア様が問いかけた。
「来てない」
一拍間を開けながら、続けていく。
「来れていない。並べない」
「……そうですか」
短く返事をするけれども、否定もしない。
でも、止めなかった。
「止めますか?」
ボクはザスキア様に問いかける。
そのまま、この状況を逃さないために。
ほんの一瞬、執務室内に間が出来る。
「あなたの役割は?」
ザスキア様が間を破るような形で逆に質問を。
「……回すこと」
ボクは答える。
「ええ」
ザスキア様は頷いた。
「では?」
一歩も引かないで続けてくる。
「止まってる」
さらに答える。
「選んでる」
息を吸い込んで、言葉を。
「それでも?」
「試験です」
静かに答える。
「……試験?」
アデリナ様が言葉を。
「限られた中で、何を残すか」
ザスキア様が説明する。
「それを見ています」
「でも、それは……試験じゃない」
ボクは困惑しながら返答する。
「外から歪められている」
「ええ」
ザスキア様は肯定する。
しかし。
「それを含めて、です」
「……止めないんだ」
ボクはタメ口みたく言葉を。
「あなたがどうするか、見ています」
ザスキア様はボクを見ながら。
(試験じゃない)
言葉に出さないで、考える。
(でも、試験として出されてる)
「……なるほど」
アデリナ様は静かに頷いていた。
「”正しい状況”ではなく」
続ける。
「”歪んだ状況での選択”を見るのですね」
「ええ」
アデリナ様の考えに、肯定するザスキア様。
「分かった」
短く返答する。
「やる」
「何を?」
ザスキア様は首を傾げる。
「引きずり出す」
ボクは宣言する。
「決めてる人」
執務室は沈黙に包まれる。
「……構いません」
軽く頷いた。
「ただし」
続けて言い放った。
「結果は、あなたの責任です」
「うん」
ボクは即答した。
迷うことなく。
「以上です」
ザスキア様とのやり取りは終わった。
執務室を出て、神殿の廊下を歩いていく。
「止めませんのね」
アデリナ様が呟く。
「うん」
「完全に、試されていますわね」
「そうだね」
アデリナ様が思ったことを、相づちをうつ。
「でも」
一拍置いて、続ける。
「やることは同じ」
「回すんですの?」
「違う」
少し息を吐いた。
「壊す」
分けているものを。




