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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第1章【その最弱は試練を始める】
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15.【ガルドの片鱗】

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

金麗の声色が、朝靄の樹林に木霊した。

リデアの驚愕の叫びに耳を塞ぎ、アキトが眉をひそめる。

「ど、どうしたんだよ・・・」

「だ、だって」

興奮、いや驚愕を押さえ込めない瞳が、アキトを見た。そして、リデアが口を開く。

「大魔石がこの村にあるなんて、知らなかったわ。」

溜息をついて、己の失念にリデアが視線を落とした。

肩を落とすリデアにアキトが告げる。

「アワリティアと・・・関係あるんだろ?」

リデアの脱帽の仕方に、それを感じて、思考を伝える。

リデアは額を軽く押さえて、悩ましそうに頷いた。

「アワリティアは、魔石を集める『魔石ハンター』って呼ばれてる。」

「ま、『魔石ハンター』か・・・」

いや、安直な名前ではあるが、それがあの戦闘力を秘め、劣悪なる悪魔を従えているのだから笑えない。

アキトに戦闘力が全くないのも原因だが。

しかし、この村、レリィに聞いた事が正しければ、この村の地下に、アワリティアが現れる可能性が高い。

「ここに危険が及ぶかもしれない・・・か。」

呟いた言葉に、リデアが苦渋の表情を浮かべる。

自身の使命で討伐を依頼された化物が、なんの罪もない人々を手にかける可能性が出てきたのだ。リデアにも思うところがあるのだろう。

声に出さずにアキトがそう思考した。

「ガルド氏に、少し話を聞かないとね。」

「ああ。ここで籠城戦的な事をするかもしれないしな。」

「ぅぅ。」

リデアの声を疑問に思い、アキトがその表情を覗き込む。

リデアもどうやらガルドが苦手らしい。リデアのような少女にまで嫌われるような事を、あの男はしていた。

アキトの心中に、レリィの事がよぎる。

あの景色と、レリィの孤独を見て、救い出すと決心した。どんな方法だろうと。

「とりあえず、宿で昼ご飯食べれるみたいだし、それからでもいいんじゃないか?」

「そ、そうね。」


ーーーーー


「にしても、こんな宿をよくすぐに用意できたな。ガルド・・・氏は。」

並んだ料理を食しながら、素朴な疑問を言ってみる。

それに対するリデアの答えは、意外だった。

「ああ、これは多分、『私達用』なのよ。」

「・・・・・・どういう事?」

『私達用』。

それは、リデア達用に先に用意していたのなら、なんの準備もなく用意できるであろう。

しかし、そうする意味がわからない。

「ここ、アキトは私達以外の客を見た?」

「?そういや、全く見てないな。」

「つまり、そういう事よ」

私達用、他の宿泊客の不在、大魔石の因縁。

アキトの思考回路が導き出した答えは、

「分からん」

「そうかも。私は、これ、経験があるから」

「?」

リデアが語り始める。

「大魔石を興都に献上するかで、もめたって言ったわよね?」

無言で頷いてみせるアキト。

「大魔石があるっていう情報を、村の中で知られて、それを調べられると厄介だから、ここで監視紛いの事をしているのよ」

「厄介?」

「大魔石のがあるっていう情報を興都に伝えられて、大魔石を徴収されたら、この村の商売は、衰退する。」

リデアの圧倒的推理に感心しつつ、少し違うという確信を抱いた。

それは、この村の商売が衰退するというところだ。

おそらく、村の建物を見る限り、住民には最低限の利益しか与えていないのだろう。

ポーションの製造に加わる人々へは、最低限の資金。そして、残った財産をガルドが使う。アキトの予想は、実際当たっている。


「あ」


フォークを刺し、かちゃりと皿にあたる音が響いた。

いつの間にか、昼食を食べ終わっていたらしい。

「それじゃあ、ガルド氏のところへ行きましょうか。」

「ああ。でも、いま居るか確認しようぜ。」

「どうやって?」

まぁ、見てなという意思表示を込めて、人差し指を口の前で立てるアキト。

それを見て、リデアが再び椅子に腰を下ろす。

「リデア、魔法の用意しといて」

「・・・?うん」

一瞬嫌な予感がリデアによぎるが、魔法を発動するのが自分だと認識して、リデアが手中にマナを込める。

一方アキトは、ゆっくりとした歩みで従業員のところへ歩き出す。

「なぁ、少し聞いていいか?」

「なんでしょう?」

老人の従業員に声をかけ、返事をするその男に近寄る。

「いま、ガルド・カーミフスは居るか?」

老人は、一瞬驚愕を顔に出し、それをすぐにおしこめる。

過去、この監視制度に気付いた者はいても、ガルド達のグルであるここの従業員にアポを取る者は、いなかったのだろう。

「申し訳ありません。私は、ただの従業員ですので・・・。」

慌てて繕った作り笑いで、白々しい嘘を吐く。

老人が腕を背中の方へ隠したのを、リデアは見逃さない。

「安心しろ、仕組みは分かった。いま言わないと、俺の独断だが興都に報告する。」

「ぬ・・・ぁ」

全く安心できない事をいい、さらりとリデアを老人の粛清対象から除外させる。

アキトの言葉に戦慄し、老人が覚悟を決めた。

背後から切り抜いたナイフを老人がアキトに突き刺し・・・

「そういう事ね・・・」

金色の魔結晶が、ナイフを粉々に砕いた。

嘘の様に自身の手中を見つめる男に、アキトが笑う。

「俺は魔術を噛んでてな、おとなしく教えろよ。」

リデアの魔法を自身の力に仕立て上げ、アキトが更に老人を脅迫した。

悔しげな老人が言う。

「ガルド様は、今日は大魔石に行っている。」

「そ、ありがとよ。」

何事もなかった様に席に座るアキトに、リデアが呆れた視線を浴びせた。

「いや、ちゃんと聞き出せたから大丈夫。」

「はぁ、」

溜息をつくリデア、その少女にアキトがたずねた。

「さっき、経験があるって言ってたよな。」

監視制度の種明かしの時に、リデアが言っていた事を思い出し、質問する。

この世界は大掛かりな隠蔽工作を日常生活で行なっているのか、それが気になったのだ。

「ええ、私が竜伐だから、大魔石を献上しなかった事に恨みを持ってるんじゃないかってね。」

「なるほど。」

過密なスケジュールの出鼻を挫かれ、リデアとアキトの雑談はしばらく続いた。

午後。暇を持て余すアキトは、遭遇した。

『カーミフス大樹林の悪業』に・・・。

ガルドの悪業が今、暴かれる。

今日はもう1話、19時に投稿します。(少し暇になった今の時期に、ストーリーを進めなければ!)

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