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道マニアのエルフさん


 エルフのニーラさんは陽子さんぐらいの背格好で良く似た雰囲気の女性です。お歳は訊きませんでしたが、どうやら百歳は越えているようです。職業は探索者と言って、珍しい植物や鉱物を採取したり山中の道案内をしたりするらしいです。上級ハンターの資格持ちで細長い剣を提げています。水魔法が使えて弓も使えるそうです。

 子どもの頃から村のまわりの森が気になって、だんだん山の中へ入るようになり、いつのまにかそれが仕事になったそうです。山中を探しあるいて、新しい交通路を拓くのが望み。険しそうに見える山の影にある誰にも知られていない道筋を見つけると嬉しいらしいです。山の中に昔に人が通っていたけれど今は忘れられている道もあって、そこにはずっと昔の名残があったりして。そういう道を歩くと昔の人と対話している気分になるそうです。最近時々聞く『道マニア』みたいな人です。



 茶虎村の近くへ出てくる山道は、猫人の商人が皇国の街への抜け道に使っていて、エルフにも古くから知られているそうです。先日この道を通ったのは早く虎猫谷へ来るためだったそうです。(街道を通ると距離が長くなって、陽の長い夏場でなければ途中で1泊しなければならないようです。)  皇国の街とこの国の街を結ぶ最短の道だけれど、峠の標高が高く、風の具合で冬は雪が多いそうです。


 その後でエルフ村の古い記録を読んでいて、昔はもうひとつ西側で稜線を越える道があった事を知ったそうです。そこで稜線を西へ歩いて探して、枝谷が深く切り込んでいる所を見つけ、その谷へ下ると古い道の跡があって、黒犬村へ続いていたそうです。ニーラさんは、騎馬で越えられる今の街道の峠が見つかるまではかなり交通があったのではないかと推測しています。


 しかし皇国の側は、峠に近い谷筋をいくつか探しても道の跡が見つからなかったそうです。木が育ったり草に覆われたりすると古い道は辿りにくくなります。斜面が崩れたり谷が掘られたりして道が途切れることもあります。だから木々が葉を落とし草が枯れた時期に道を探すのだそうです。特に雪が薄く降ると、地表の余分な物を覆い隠して僅かの平場がはっきり見えることが多いんだそうです。そこで初雪を待って探して、やっと道を見つけたらしいです。


 見つかった昔の道は、谷筋ではなく、峠の下すぐから山腹を斜めに巻いてエルフの村のすぐ上を通っていたそうです。坂は緩いですが、皇国の街へ行くにはだいぶ回り道になります。それで猫人の村へ下る峠に交通が移ると寂れてしまったのでしょう。道沿いに見つかった遺物はどれも数百年前の物だそうです。古い廃道であっても、地形が良いのか酷く荒れた所はなく、一度判ってしまえば辿りやすい道筋だそうで、エルフの村から山を越すにはかえって便利な道だとか。猫人の谷へ越す峠よりもかなり低く、雪もそれほど多くない峠。少し道を整えたら、雪が無い時期には雉虎村の宿場まで8時間ぐらいになりそうだと。


 古い古い時代の峠越えの道。犬人たちはこの道を知らないようですから、入植した300年前頃にはもう使われてなかったのでしょう。狭い山塊を挟んで暮らすのですから、これを機会に犬人や猫人の村とエルフの村の交流が始まるといいですね。お互いに足りない物を補えあえれば、暮らしも豊かになります。


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