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突如現れた、なんだかおっちょこちょいの彼女。
「うん。まあ……なんか悪いし、俺も言うわ。漣 蒼真。ミド高の一年」
ミド高とは、俺が通ってる学校の通称だ。
漢字で書くと『翠陵高校』。
『翠』は緑の意味なので、みどりの高校、通称ミド高である。
ちなみに翠陵高校は県下でも有数の進学校で、その中でのおれの成績はかなり……『下』の方だ。
今は特に部活にも入らず、放課後はだらだらと本屋で立ち読みなどをして帰る、そんな学生生活を送っている。
「さざなみくんっていうんだ! なんか話せる人っぽくてよかった~! 私、ゲーフの一年だよ」
ゲーフ。ひらがなだと、げいふ。
総芸館付属、宮下高等学校。
まだ創立されて日が浅い新設校で、運動系文科系を問わず、部活動や数々のコンクールなどに力を入れている、新進気鋭の女子校だ。
制服が個性的で可愛いとの評判は俺も聞いたことがある。
「日種さんも……どぐ丸に呼ばれて?」
初めてここで出会った仲間(?)。
俺はまず最初に思い浮かんだ疑問を口にした。
それを聞いた彼女は、おもわず噴き出してから答える。
「あははは! どぐ丸! ほんと笑っちゃうよね。あんなのが町のご当地キャラだなんて!」
全然答えになってない。
俺は普段女子と話すことなんてほとんどないし、あまりノリもいい方ではない。
たぶんものすごい真顔になってたんだろう。
彼女はふとこっちを見ると、わざとらしく喉を鳴らし、少し真面目な顔を繕って答え始めた。
「やっぱりキミもなんだね。私、放課後にこっそり屋上で昼寝してたら急に連れてこられたんだ。んで眼が覚めたら鳥居のある薄暗い部屋の中で、目の前にどぐ丸がいたって感じ」
話しているうちに段々と声が浮ついてニヤニヤし始める彼女。
どのぐらい今の状況を理解しているのだろう。
「どぐ丸は、なんて言ってた?」
「えっと。町中から集めた優秀な若者同士の戦いで、他の子を全員倒したら願いをかなえてあげるって」
笑顔のままそう話す彼女だったが、その表情の奥に何やら鋭いものを感じ、俺は少し緊張感を取り戻した。
と、同時に、一つの疑問が生じる。
「優秀な若者?」
お世辞にも特に目立った才能のない俺が、そこに選ばれるか?
「うん。私にもよくわからないんだけど、そう言われた」
そう話す彼女の顔はいかにも無邪気な可愛らしい表情に戻っている。
「日種さんは、なにか特技とかあったり?」
「いや、全然だよ。毎日ネットで音楽聴いたりゲームしたりしてるだけ」
そういいながらクスクスと笑う彼女からは、別に他意は感じない。
「でも、他の子は違うんじゃないかな」
「え?」
急に目線を落としてしばらくスマホの方を見た彼女は、やがて顔を上げ、そこに映し出された画像を俺に見せた。
彼女からは数メートルの距離があるので、あまりはっきりは見えないが、どうやらそれは一人の男子学生の画像の様だ。
「その画像は?」
再び彼女はスマホを手元に戻し、なにやら画面を操作する。
「紀本亮平。私、この人にさっき倒されたんだよね~……」
そう話す彼女は眼を細め、かすかに笑みを浮かべている。
……可愛いんだけど、時々鋭い目つきをするのが少し怖い。
「中学時代、剣道で日本一になってるっぽい。高校になってからは大会には全く出なくなったけど、伯父が剣術道場を開いてて、そこで剣術の稽古を今も行っている。みたい」
薄暗い部屋の中で、スマホの光を反射した彼女の眼鏡が怪しく光る。
「詳しいな……」
俺が小さくつぶやくのを耳にしてか、彼女はそこでふと顔を上げ。スマホの画面を消した。
「今はネットでなんでも調べられるからね」
そう言いながら、彼女は小さく舌を出す。
「おそらくだけど……この人みたいに、何か抜きんでた能力のある子ばっかりが集められてるんじゃないかな、このゲーム」




