判明
「陽壱。早かったな」
背後から声がした。
「う……」
振り返ろうとした俺は、そこでようやく自分が地面に突っ伏している事に気付き、ゆっくりと立ち上がる。
「もしかして、また死んだ……?」
「今度は正面から頭蓋骨をかち割られたな」
眼の前に居たのはどぐ丸。
無表情な着ぐるみの顔からは、何も読み取ることが出来ない。
だが、デスゲームの最中で他人をかばって死んだ俺に対し、きっと呆れているのではないだろうか。
と、思いきや。
「別に他人を助けるのは悪いことではない」
「え?」
どぐ丸の予想外のセリフに、俺は思わず眼を見開いた。
てっきりもっと非情になれとか、冷静になれとか言われるかと思っていたのだ。
「この戦いで求められるのは、より強い者の選別だ」
そこで一瞬だけ間を開ける。
そして、一歩だけこっちに踏み込んでから続けて言った。
「そのために工夫をしたり、誰かと一時的に力を合わせたりすることは必要な事や」
「そうなのか」
「ただ、そればかりではいかんがな」
この戦いは、単純に相手を倒していくものだとばかり思っていたが、どうやら少し毛色が違うようだ。
求められるものは力だけではなく、戦略を練る知恵や状況を把握する冷静さ。
もしかしたらコミュニケーション能力なんてものも試されているのかもしれない。
「ようやく皆、戦いの流れが分かってきて、少しずつ動き始めたな」
どぐ丸は俺に例の和紙を見るように促した。
紀本 亮平 四 三
日種 香 三
塚原 隼斗 二 一 休
西野 由佳理 四
静守 曜子 四 一
漣 蒼真 二 休
国原 創 四
相変わらず紀本ってやつが、頭一つ抜けている。
そして俺が最下位か……。
「さっき俺を殴ったあいつが、紀本か塚原のどっちかなんだろうな」
俺は少しでも情報を集めたいと思い、どぐ丸の方をちらっと見る。
「最初に蒼真を殺したのが紀本亮平」
どぐ丸は微動だにせぬまま話し始めた。
「今回のが塚原隼斗」
相変らずどこから発してるのかよく分からない声だ。
「ちなみに蒼真が突き飛ばした相手が、静守曜子」
そこでどぐ丸は少しだけ上体を揺らしながら言った。
「塚原隼斗は蒼真を倒した直後、曜子のニ本目の矢で殺られた」
こいつ……生々しい内容をユルく言いやがる……。
「って、けっこう詳しく教えてくれるんだな!」
どぐ丸の意外な返答に、蒼真はおもわず突っ込みを入れてしまう。
「まあ特別やな。何もせずに終わってしまっても意味ないし」
どぐ丸はやや意味深なことを言った風にも思えたが、それよりも俺は、さっきの少女の事を考えていた。
静守曜子、か。意外な形で名前を知ることが出来た。
八百万の神々の、個人情報管理の意識はガバガバだな。
というか……まさか彼女とこんなところで、こんな形で出会うことになるとは。
「さあ、次行ってみようか。他人を倒すために必要なのはな、蒼真。勇気と思い切りや。思いやりじゃないぞ。思い切りやぞ」
そう言いながら、どぐ丸はまた正面の鳥居の奥に消えていった。
去っていく途中、謎の着ぐるみは肩をすくめて笑っていた。
ような気がした。




