未知
ついに強敵を撃破した四人。
次の作戦を考えるため、体育館裏の用具室の中に居た。
目の前にあったテニスボールをにぎにぎしつつ、俺は呟く。
「もう、あいつを罠にかけることは無理な気がする」
紀本は矢を受けた瞬間、当たるより先にその存在に気が付いていた。
俺に対して攻撃のモーションに入っていなければ、おそらくあの攻撃ですら急所を避けられていただろう。
あの瞬間、目の前で起きた光景が脳裏から離れず、俺は遠い目をした。
「だよね。少なくとも複数の人間で協力していることはバレたわけだから、もう向こうから攻撃してくる可能性も低いだろうね」
さすがの日種香も、すこし眉をひそめて考えこんでいる。
「おそらく次は、矢を当てることも難しいと思う」
高く重ねられた飛び箱に少し体重を預けながら、静守さんも小さく息をつく。
「なんだそりゃ。じゃあ次は何だ? 落とし穴か? それとも毒ガスか?」
俺達の悩んでいる様子を見て、ハヤトは大げさに手を広げてうすら笑いを浮かべた。
かなり憎たらしいが、ハヤトの言っていることもわからなくはない。
完全に裏をかいて戦術を組むことはもう不可能に近いので、今後は作戦をガラッと変えねばならないだろう。
俺はふと思い出し、言ってみた。
「西野由佳理と国原創の二人は、どういう人間なんだろうか」
「なんだ? 残りの奴のことはまだわかってねえの?」
ハヤトはつまらなさそうに吐き捨てる。
「香ちゃんの話だと、二人ともあまりスポーツの大会などで活躍しているタイプじゃないんだよね?」
口元に手を当てて考えを巡らせていた静守曜子。
周りの反応を確かめるように、俺と日種香の方を交互に見ながら呟いた。
「そっか……。よし、次はそれでいこう!」
何かに気付いたのか、日種香の目がきらりと光る。
『次?』
残りの三人の声がおもわずハモる。
我らがブレイン日種香の次の策はこうである。
紀本亮平を再び罠にはめて倒すのはまず不可能。
さらに連携を組んでいることはもうバレたので、今後は四人まとまって行動する。
それによって逆に奇襲される可能性をほとんど0にできるだろうし、もし攻撃されて誰かがやられても、残ったメンバーで倒せるよう気構えを作っておけばいい。
それらを踏まえたうえで、校内をじっくり探索し、校舎の構造を完全に把握。
かつ、未だ姿を見ていない残り二人を見つける。
「ってな感じかな」
「さっきと違って随分消極的な作戦だな」
不敵な笑みを浮かべる日種香に対し、ハヤトは頬杖をついたまま言う。
……ハヤトの言い方にはかなりトゲがあるが、言ってることは確かに当たっている。
今回の作戦には不確定要素がやや多く、明確な目標がないように思える。
日種香。相変らず本音が見えないなあ。
「で、でも、まだ会ったことのない二人がどんな人たちなのか、気にはなるよね」
微妙な雰囲気を察したのか、静守曜子はやや気を遣いながら俺に同意を求めてくる。
「西野由香理は話から察するに、消極的と言うか大人しいイメージがするからまだいいけど、国原って奴は存在が謎すぎるんだよな」
せっかく静守さんが頼ってくれたので、俺はちょっと頭を捻ってそれっぽいことを言ってみた。
「まあ、ここに集められたメンバーだし、何も得意なものがないとは考えにくいわな」
ハヤトは誰とも目を合わせることなく、小窓の方を見ながらぼそっと呟いた。




