目的
最初はあり得ないと思った。
相変わらず予想もしないことを急に言い出す日種香に、俺と静守曜子は思わず驚きの声を上げる。
「俺を殺した奴と同盟って、気まずいな」
「とかいって、曜子ちゃんにも最初に殺されかけたんでしょ? じゃあなんとかなるなる!」
「う、ごめんなさい……」
横で話を聞いているだけだった静守曜子は、突然自分の名前が出てきて恐縮しきりだ。
「積極的に行動してない人はともかく、不確定要素は野放しにはできないからね」
日種香はスマホの画面を見つめながら呟いている。
「……まずは彼も同盟に引き込み、打倒、紀本亮平!」
「なるほどなあ。たしかにまずは連合して強い奴から倒すべきだよなあ」
「なんだか紀本君に悪い気もするけど、香ちゃんの言ってることは正しいよね、きっと」
自分でも思うが、俺の意見は頼りなさすぎる。
さらにはまだ状況が完全には呑みこめてない静守曜子の言葉に、ますます日種香のテンションはあがる。
「そんなんじゃこのゲーム勝ちぬいていけないよ! あ、あと! 漣くんのことはソーマ。曜子ちゃんのことは曜子ちゃん。私はカオリ! これからお互いそう呼ぶようにしましょう!」
『え!』
「だってチームに連帯感は必要でしょ? それに、名前は咄嗟に呼びあえた方がいいし」
そこまで言い終わると、日種香はヒヒヒと意地悪そうに笑った。
「いきなりそれは……抵抗あるなあ」
女子を下の名前で呼んだことのない俺は、明らかに挙動不審になる。
「じゃあ、日種さんのことは香ちゃんって呼ぶね。けど……漣君はしばらく漣くんで、いいかな?」
静守曜子は少しだけ歩み寄りを見せていた。
……俺に対しては、まだまだ大きな壁があるようだが。
「しかたないなあ二人とも。最初は抵抗あっても、ようは慣れだからね、慣れ」
仕方ないなあと言いつつも、そこに対してこだわりは無いようだった。
「まあいいや。そろそろ塚原隼斗は校舎の中に入ってくる頃だと思うし、さっそく作戦を練りましょ」
「まあ、俺もとりあえずは、日種さん、静守さんって呼ぶわ」
「私も……頑張ってはみるけど、とりあえず最初は呼びやすいように呼ぶと思います。なので……よろしくね。漣くん、香ちゃん」
「まあ、いいんじゃないかな。こちらこそよろしくね!」
なんだかずっと日種香のペースだったように思うが、とりあえず俺たちは同盟を組んで行動することになった。
一番大きな変化は……静守さんと行動を共にするようになったことだ。
最初はとんでもないことに巻き込まれたと思ったが、こんなことになるなら、どぐ丸には感謝しないとな。
そんなことを考えながら、俺たちは多目的教室を後にした。
次にすべきは塚原隼人か……。
ハヤト……。
そういや昔、同じ名前の友達いたなあ。




