↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精に転生した私は、年上の摂政殿下にめちゃくちゃ甘やかされる  作者: サイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/50

33.過保護なブレイク

 ポールの事は、ちゃんと伝えていなかった私が悪かったと思う。

 だから落ち着いてからブレイクには謝罪したんだけど……それは違うと突っぱねられてしまった。

 それからというもの。事件のあと、ブレイクは明らかに過保護になった。

 いや、前からかなり子供扱いだったけれど、あれ以来さらに輪をかけて——。

 朝は支度が終わる頃に毎日部屋まで迎えに来てくれる。

 昼は執務の合間に庭での散歩に付き合ってくれて、夜は相変わらずリーフェルの花を届けて、少し長めに話をしてから帰って行く。

 ……こんなに私に付き合ってて、大丈夫なのかな。


 例えばある日。

 花の庭園を眺めていた時、ふと小さなくしゃみが出た。

 花粉かな、と思ったら。

「ナノリア……風邪か?」

 隣を歩くブレイクがさっと手を上げた。

 遠くに控える強面の騎士がやってくる。

「医師を呼べ」

「は」

「え」

 ブレイクは私に上着を掛けた。——羽を避けるから大きすぎてごわごわする。

「ナノリア、すぐに——」

「い、いえ、だいじょうぶです! ただのくしゃみですから」

「油断したら駄目だ。もし熱が出たらどうする? こういうのは引き始めが肝心なのだから」

 結局、この日は部屋に戻って医師まで訪ねてきてしまった。


 またある日。

 町に遊びに出たとき、私は子供たちに取り囲まれた。

 最近は私にも慣れてきて、遠巻きというよりはよく話しかけてくれる。

 この日は元気な子供がヒートアップして、私に抱きついてきた。

 その瞬間、ブレイクが即座に間に入り、子供をひょい、と持ち上げた。

「ナノリアは驚くから、ゆっくりだ」

 距離を取らせながら、私の羽をかばうように立つ。

 そのさりげない仕草が、嬉しいやらこそばゆいやら。


 あとは——そう、書斎で本を読んでいる時。

 いつの間に来たのか、気付けばブレイクが横に立っていた。

「ナノリア、いつもこんなに暗い所で読んでいるのか」

「あ、はい。本に陽の光は良くないって。そんなに暗いでしょうか」

 字は読めるし気にしてなかったんだけど。

「これでは目に良くない」

 そう言って、たくさんのランプを持ってきてくれた。

「とりあえずはこれでいいか。続けていいが……疲れたらすぐ言うんだ」

 去り際、窓を作るかとか言ってたから、何とか止めてくれとルイーナにお願いしておいた。


 もっとひどいのはついこの前、階段を降りていた時の事だ。

「ナノリア、階段はもっとゆっくりがいいんじゃないか。手すりを持って」

「持ってますよ……」

「私といる時はいいが……」

 そう言って考え込んでいる。

 これはもう、過保護というより子供……もっと言えば幼児あつかいじゃないかな。

 とはいえ、気に掛けてもらえるのはありがたい。

 関心を寄せてもらっているのはありがたい。

 今はこの距離に満足するしかないかなって、思う。




 そんな風に日々が過ぎて行って。

 私は庭をパウラと一緒に歩いていた。

 ドライフラワーを作るための花を摘もうと思って、一緒に香りの良さそうな花を摘んでいた。

 ふと窓の方から声が聞こえる。このエリアはそういえば執務室と近いんだった。

「……そろそろ、ご結婚をお考えいただかねば」

 家臣の声だ。私は思わず耳をそばだてた。

 パウラも気づいたようで、さっと窓の下に潜り込んで手招きをしてきた。

「え……ちょっと——」

「しっ」

 指を口元に当てて、早く、と手招きされる。

「ええー……」

 と言いつつ、私も聞きたくなって、窓の下にパウラと並んでしゃがんだ。

「公爵様。家臣一同の懇願です」

「領地にいると言われると思ってたんだよな……はあ」

 ブレイク様のため息が聞こえた。

 胸がぎゅっとした。

 ——結婚。

 ブレイク様が結婚する。

 当たり前だ。摂政殿下なんだから。

 こんなに優しくて、仕事ができて、公爵で……こんなに素敵な男性、社交界が放っては置かないはず。

「どういった条件なら、首を縦に振っていただけるんでしょうか。あまりにも消極的ではありませんか」

「そうだな……私はきっと結婚できないような気がする」

 ブレイク様の声がした。

 ——え?

 私は思わずパウラと目を見合わせた。

「——何か人には言えない性癖でもお持ちなんでしょうか」

 私は慌ててパウラの口を押さえた。聞こえたらどうするんだ。

 幸い、ブレイクが笑っていたから、パウラの声はかき消されたみたい。

 冗談なのだろうか。

「どういう、ことでしょうか」

 家臣が困惑した声で聞く。

「どれほどお忙しくとも、婚姻は可能かと——いえ、お忙しいからこそ、公爵様を癒して下さる伴侶の存在が大切なのではありませんか」

「いや、忙しさのせいにするつもりはない。そうではなく、私の気の持ちようの問題だ」

 沈黙が流れる。

 しばらく考えた末に、家臣がはっとしたように言った。

「まさか……既に想われている方が?」

 どきりとする。

 思わず息をつめていたようで、パウラに「息してください」とささやかれた。

「その方は結婚できない方なのですか?——まさか……男性!?」

 ブレイク様は慌てたように声を上げた。

「ばか言え、違う!」

 しん、と静まった執務室にこほん、とブレイクの咳払いが聞こえる。

「その……想い人というわけじゃない。そういう気になれないだけだ。——まあ、だから、養子に良さそうな後継を探しておいてくれ」

「しかし公爵様、以前は摂政職を終えたらすぐにでも結婚すると仰せでしたのに……」

「そうだったかな」

「心境の変化が……」

「まあ、そうだな」

 家臣は引き下がらなかった。

「疲れてしまわれたのですか」

「いや、私は元気だ。——色々とやりたいことがあるから、結婚している場合でもないと言うか」

「確かに近頃公爵様は、ナノリア様に……あ」

 微妙な、間。

「何だ」

「ナノリア様に……? このままご夫人となっていただくのはいかがでしょうか」

 心臓が止まりそうになった。

「ない」

 ブレイクは、ものすごい勢いで否定した。

「正気か? 一体いくつ年が離れていると思ってるんだ」

 心底呆れた、というようなブレイクの声に胸が痛んだ。

「しかし、公爵様は近頃ナノリア様にべったりではありませんか」

「……その言い方はやめてくれ。危険がないように見ているだけだ」

「ナノリア様も、公爵様を慕っておいでのようですが」

「いや、そんな。——父兄に対するようなものだろう? あの子のその信頼を汚すようなことは……そんなこと、露ほども思われないようにしろよ」

 ——露ほども。

 あまりにもきっぱり否定するから、望みがなさすぎるのだと突き付けられたようだ。

でも、ブレイクはそう思っているんだ。

 分かってる、いつもの態度で、どれだけ体の距離が近づいたって、恋愛対象になりえないっていうのは。過保護に彼是してくれるけど、あくまでも家族……。

 ブレイクは続けた。

「……とにかく、結婚は考えない。養子の件だけ進めてくれ」

「承知しました」

 会話は終わって、家臣が去っていく。

 私はしばらく動けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。