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11/12

愛と共闘そして尊厳

議論の末、各国の首脳は記者会見を行うことにした。

世界全土に脅威が知れ渡った。


連日連夜。

害雷が街を襲い、人々を捕食する映像。

巨火子が害雷を捕食する映像が流された。

そして、

この巨火子の操縦者は二人の子供だと、

あと数回しかもたない可能性が高いと報じられた。


国民はパニックとなった。

トイレットペーパーやカップラーメンは、

店頭から消えた。

空手や格闘技の道場への入会者が増え、

怪獣映画の視聴回数は異常な伸びを示した。


軍への志願者は激増したが、恐怖から除隊を願い出る者も続出した。


民間では退職者が激増した。

特にブラック企業と呼ばれる企業は、

人手不足で倒産した。


SNSでは、この話題で持ちきりだった。

害雷を避けるというお守りが販売され、

莫大な利益を上げた。


水商売は活況だった。

もう世界は終わりだと、

人々は金を使った。返す予定のないクレジットカードを使いまくった。


世界が滅亡に向かう中、

経済はバブルさながらの動きを見せた。


そして国民を巻き込んだ議論の末、

可能な限り、人々が固まって生活するという方向が決まった。


理由は、防備を簡略化するためだ。


防衛に使える資源は限られている。

限られた地域へ集約すれば、集中的に守ることができる。


ただし、この戦略にも弱点はあった。

敵にとっても、巨大な餌場となるからだ。


そうして、人々は首都とその近郊へ集められた。


車での移動は制限され、公共交通機関が優先された。

政府は「国民総ミニマリスト宣言」を発表した。


持ち込める荷物は、原則として一人一つ。

空き家はすべて埋まり、学校、ホテル、雑居ビル、廃工場までがシェアハウスへと変えられた。


公園は憩いの場ではなく、公営のキャンプ地となった。


ただ全ての人がそうしたわけではない。

二割は、住み慣れた土地に残ることを決めた。


大きな餌場が狙われる懸念。

そして、住み慣れた土地を離れることへの抵抗感だ。


美祝と翠明は、最終手段として温存することが決められた。

一度か二度で壊れる可能性が高くなった以上、

そうするのが、合理的だと判断された。


そして、護衛付きだが、俺たち家族に夏休みが与えられた。


一日一時間程度のネットでの会議に参加する必要はあるが、

それ以外は自由だった。


滅びがわかっている中での、束の間の休息ではあるが……。

出来なかった親らしさを出したい。

そう思った。


……


俺たちは研究所から30分ほどの農地と山付きの空き家を借り、

田舎暮らしをすることとなった。


二人に相談したところ、

自然の中で、父さんが子供の頃にやっていたような夏休みを過ごしたい。

そう言われたからだ。


ここであれば、緊急時にもすぐに戻れる。

近くの田んぼを整備し、ヘリポートにした。


空き家と言っても、少し前まで、人が住んでいた家。


「庭の畑のきゅうりも、とうもろこしも、トマトも、スイカも、お歳暮で貰った食料品も皆食ってくれ」

そう言われた。


とはいえ、俺に生活力はまったくない。

きゅうりを収穫した事も、もちろんなかった。


「しかし……、父さんはな。田舎のじいちゃんの家でこういう生活はしたことがある。でも食べものとか、全て用意してもらってたからな」


「私も経験ない」


「大丈夫だよ。僕は収穫した事があるし、素麺も作ったことがある。僕が教えるよ」

翠明は笑った。


俺たちは翠明の指揮の下、田舎の生活を始めた。

やってみて自分の不器用さに驚いた。

正直、テストで良い点を取るほうが、よっぽど楽だと思った。


(ぴこんぴこんぴこん)

端末が鳴り、俺は開く。


「すまん。とんでもない動画が拡散している。これを見てくれ」

桜井は、動画配信サイトのURLを送ってきた。


俺はモニターに映し出す。


老害じいちゃんねるーーーー


「老害じいちゃんが害雷を倒すの巻」

なんだこれは?

動画を再生する。


画面には数十人の老人たちが映し出される。

「まいど!老害じいちゃんです」

アロハシャツを着た老人が挨拶をする。


「まぁ我々、老害だとか……、集団自決しろ……、とか、

無茶苦茶言われているけどな」


周りの老人が頷く。


「今回は若者にはできへん。

ワシらの戦い方を見せてやろうと思ってます」


アロハの老人は一人で話し続ける。

どうも、このチャンネルは、この老人一人で進行していくようだ。


「ワシらはもう身寄りもないしな。

少ない遺産とかは、遺書で使い道を残したし。

心配はナッシングやで」

アロハの老人は、テロップで遺書の写真を見せる。


「コメントが入ったな……」


「えっと、どうやって戦うのですか」


「これを見ろ!じゃーん」


画像には不発弾らしきものが映し出される。


「これはな。うちの畑にあったもんやねん。普通は軍に連絡するんやけど、ほらワシ。軍が嫌いやろ。しらんか……。それでな倉庫に保管しておいた」


「そして、これをなリュックサックに入れて、背負って、害雷にワシが食われる」


「ほな。どうなる?」


「どかーんってなんねん」


「しかし……、不発弾をまさか使うことになるとか思ってへんかったわ」


「死んだ婆さんがな。使わんものは処分せんとあかんよって、言うとったんやけど、置いてて良かったと思うわ」


「ワシの子供も孫も、害雷に喰われた。ここにいる連中、みんなそうや」


「あとこれは、こいつ栗爺がな。昔鉱山で働いてた時に、パクった爆薬やで。昔は管理がざるやったからな。

なんかあったとき用に、置いといたらしいねん。ほんま何に使うねんって話やで、使っとるけどな」

隣で栗爺と呼ばれる老人がピースをしている。


「これをな。ワシらが背負うやろ。

ワシら食われるやろ。

噛んだら、どかーんや」


「またコメントついたな」


「問題はあれやな。丸のみやったら困るなやってか……」


「それは問題あらへん。ちょっとした仕掛けがあってな。衝撃が加わるとドカーンとなるようにできてんねん」


「なんで死ぬんやって?」


コメントを見て、老人たちは大笑いしている。


「こりゃ傑作やな。

ワシらな、もう七十年も八十年も生きた。婆さんも子供も孫も死んだんや。何が残る?」


周りの老人たちも頷く。



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