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俺たちは、三時間ほどグラススキーを楽しんだ。
「あぁ父さん、面白かった。もういいわ。帰りましょ」
美祝は言った。
「あぁ。翠明はどうだ?」
「僕もへとへとだよ。お腹空いた」
「美祝は?」
「私もお腹空いた」
「この辺に食堂はないか?」
「この辺ですと、ファミリーレストランがあります」
「ファミリーレストラン……、それは?」
「父さん。ファミレスっていう、いろんな物が食べられるレストランだよ」
「父さん。私、それ行ってみたい」
「翠明は行ったことがあるのか?」
「母さんに連れて行ってもらった」
「そうか……、じゃあ行こうか」
「うん」
俺たちは、ファミリーレストランに向かった。
俺たちの席を囲むように、軍部の人間たちが周囲の席へ座った。
彼らは珈琲を注文し、周囲を警戒する。
「私、このいちごのビッグパフェというのが食べたい」
「それだけでいいのか? カレーとかもあるぞ」
「姉さん。お子様ランチがあるよ」
「なにそれ? うわ可愛い。じゃあそれ」
「姉さん。もう中学生なのに、お子様ランチ頼むの?」
「なによ! ダメなの? 私、お子様ランチ頼んだことないもの」
「ダメじゃないけど……」
「俺も、そのお子様ランチを頼もうかな?」
「えっ。父さんも?」
「あぁ。俺も食べたことがないんだ」
「そうか……、じゃあ僕もお子様ランチにする」
「なによ翠明。あんただって食べたかったんじゃないの」
美祝は笑った。
翠明がボタンのようなものを押す。
(ピンポン)
突然の音に軍部の人間達は、一斉に警戒をする。
「あぁごめんごめん。店員さんを呼んだんだ」
翠明は恥ずかしそうに笑った。
「お待たせしました。ご注文は?」
「いちごのビッグパフェを三つ。あとはお子様ランチを三つ」
「パフェは食後ね」
美祝が付け加えた。
「あの……、お子様ランチはお子様限定のメニューなのですよ」
「俺はこのお子様ランチというのを食べたことがない。つまりは初心者。子供のようなものだ」
「しかし、決まりは決まりですので……」
「父さんは、こう見えて、お子ちゃまよ。片付けとかも苦手だし」
美祝は言った。
「そう言われましても……」
軍部の人間が立ち上がりかけた。
俺は目で制した。
「店員さん。ごめんなさい。実は僕が二つ食べるんだ。二つ食べたらダメかな?」
翠明は悲しそうな目で店員に訴えた。
「そういうことなら大丈夫です。すぐにお持ちします」
そう言い、店員は去っていった。
「翠明……、お前は二つ食うのか?」
「食わないよ。ああいう堅い人は、形式だけでも整えてあげると、動けるんだよ」
軍部の人間は頷いている。
息子ながらに、賢いな。
「翠明。お前ずいぶん賢いな」
「そりゃ父さんの息子だもん」
「そうか……、では俺はお子様ランチを食っていいんだな」
美祝はクスクスと笑っている。
「もちろん」
翠明は笑顔で答えた。
お子様ランチとパフェが運ばれてきて、
俺たちは、食べだした。
途中、美祝が軍部の人間用に、いちごのビッグパフェを注文した。
彼らは戸惑ってはいたが、
美祝が、
「任務よ。いちごのビッグパフェを討伐しなさい」
と号令をかけると、
一斉に食いだした。
皆から笑顔がこぼれた。
俺はその姿を見て、全てを打ち明けようと思った。
「実はな……。俺は死に戻りなんだ」
食事の手が止まる。
皆、俺の言葉に耳を傾ける。
「死に戻りって何?」
美祝が尋ねた。
「遠くない未来に俺は死に……、そしてまた戻ってきた」
「僕、小説で読んだことがあるよ……、死んでは、ある時間に戻るのを何度も繰り返すって」
「あぁ。まさにそれだ」
「あの長官殿。ここでは少しマズいかと。研究所に戻り、皆で情報を共有しましょう」
「あぁ。そうだな。すまん。どうしてもここで言いたくなったのだ」
皆、無言のまま食事を再開した。
それから、研究所に戻る途中、皆無言のままだった。
……
そして緊急に関係者が招集される。
会議には政府、軍部、財団、各分野の研究者が参加していた。
遠方の者はネット回線を使い参加する。
「すまない。俺一人で解決できると思っていたが、無理だ。知恵を貸してほしい」
俺は言った。
「君は死に戻りだと聞いたのだが、それを証明するものはあるか?」
東は口を開く。
「ちょっと待ってくれ! このクソがつくほどの堅物がこんな冗談を思いつくと思うのか?」
桜井は笑った。
俺を知る者たちは頷いた。
他の者も、その反応を見て口を閉ざした。
「その時に起きたことの情報共有はできる。ただ今後の行動により、未来変化は起きる可能性はある。問題はそこだ。信じてもらえる根拠も証拠もない」
「君が死に戻りだとすると、未来の我々は滅びているのか?」
東は尋ねた。
「わからない。ただ多くの都市が壊滅し、この研究所も襲われた」
皆ざわつく。
「タイムリミットは?」
誰かが言った。
「おそらく二百日ほど。俺が知っている限りのことを、情報共有する」
俺は起きたことを箇条書きにまとめたレポートを配布した。
「まさか。完全に詰んでいる」
「ここから、どう挽回しろと」
「駄目だ。もう破滅だ」
「だいじょうぶ。私が戦うわ」
美祝は叫んだ。
「駄目だ。お前は次の戦いで壊れる」
「だいじょうぶ。私はお墓に行って、お母さんの愛を知ったことで、強くなれたわ」
「それなら、僕だってそうだ。父さんに嫌われてなかったと知って、強くなれたと思う」
「そうかもしれない。しかし、お前たちにだけ、頼ることはできない」
俺は言った。
「皆さん。
私たちは大人です。
このまま、この二人の子供に、我々の運命を丸投げして良いのでしょうか?
恥ずかしくないですか?
情けなくないですか?」
桜井は叫んだ。
「そうだ! 我々は大人だ」
「そうだ! そうだ!」
「害雷共をぶっ潰してやろう」
賛成派の声が大きくなる一方、頭を抱える者もいた。
やはり、組織とはこういうものだ。
「では、具体的に案を出していこう。案を送ってくれ」
俺は言った。
「すまない。人道に配慮しない方法になるかもしれないが……、それでも良いか?」
首相が言った。
周囲はざわつく。
「まずは、出してみましょう。他の方のアイデアを組み合わせれば、最小限の被害で済ませる方法かもしれない」
俺はそう答えた。




