表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/12

共有

俺たちは、三時間ほどグラススキーを楽しんだ。


「あぁ父さん、面白かった。もういいわ。帰りましょ」

美祝は言った。


「あぁ。翠明はどうだ?」


「僕もへとへとだよ。お腹空いた」


「美祝は?」


「私もお腹空いた」


「この辺に食堂はないか?」


「この辺ですと、ファミリーレストランがあります」


「ファミリーレストラン……、それは?」


「父さん。ファミレスっていう、いろんな物が食べられるレストランだよ」


「父さん。私、それ行ってみたい」


「翠明は行ったことがあるのか?」


「母さんに連れて行ってもらった」


「そうか……、じゃあ行こうか」


「うん」


俺たちは、ファミリーレストランに向かった。


俺たちの席を囲むように、軍部の人間たちが周囲の席へ座った。

彼らは珈琲を注文し、周囲を警戒する。


「私、このいちごのビッグパフェというのが食べたい」


「それだけでいいのか? カレーとかもあるぞ」


「姉さん。お子様ランチがあるよ」


「なにそれ? うわ可愛い。じゃあそれ」


「姉さん。もう中学生なのに、お子様ランチ頼むの?」


「なによ! ダメなの? 私、お子様ランチ頼んだことないもの」


「ダメじゃないけど……」


「俺も、そのお子様ランチを頼もうかな?」


「えっ。父さんも?」


「あぁ。俺も食べたことがないんだ」


「そうか……、じゃあ僕もお子様ランチにする」


「なによ翠明。あんただって食べたかったんじゃないの」

美祝は笑った。


翠明がボタンのようなものを押す。

(ピンポン)

突然の音に軍部の人間達は、一斉に警戒をする。


「あぁごめんごめん。店員さんを呼んだんだ」

翠明は恥ずかしそうに笑った。


「お待たせしました。ご注文は?」


「いちごのビッグパフェを三つ。あとはお子様ランチを三つ」


「パフェは食後ね」

美祝が付け加えた。


「あの……、お子様ランチはお子様限定のメニューなのですよ」


「俺はこのお子様ランチというのを食べたことがない。つまりは初心者。子供のようなものだ」


「しかし、決まりは決まりですので……」


「父さんは、こう見えて、お子ちゃまよ。片付けとかも苦手だし」

美祝は言った。


「そう言われましても……」


軍部の人間が立ち上がりかけた。

俺は目で制した。


「店員さん。ごめんなさい。実は僕が二つ食べるんだ。二つ食べたらダメかな?」

翠明は悲しそうな目で店員に訴えた。


「そういうことなら大丈夫です。すぐにお持ちします」

そう言い、店員は去っていった。


「翠明……、お前は二つ食うのか?」


「食わないよ。ああいう堅い人は、形式だけでも整えてあげると、動けるんだよ」


軍部の人間は頷いている。

息子ながらに、賢いな。


「翠明。お前ずいぶん賢いな」


「そりゃ父さんの息子だもん」


「そうか……、では俺はお子様ランチを食っていいんだな」


美祝はクスクスと笑っている。


「もちろん」

翠明は笑顔で答えた。


お子様ランチとパフェが運ばれてきて、

俺たちは、食べだした。

途中、美祝が軍部の人間用に、いちごのビッグパフェを注文した。


彼らは戸惑ってはいたが、

美祝が、

「任務よ。いちごのビッグパフェを討伐しなさい」

と号令をかけると、

一斉に食いだした。


皆から笑顔がこぼれた。

俺はその姿を見て、全てを打ち明けようと思った。


「実はな……。俺は死に戻りなんだ」

食事の手が止まる。

皆、俺の言葉に耳を傾ける。


「死に戻りって何?」

美祝が尋ねた。


「遠くない未来に俺は死に……、そしてまた戻ってきた」


「僕、小説で読んだことがあるよ……、死んでは、ある時間に戻るのを何度も繰り返すって」


「あぁ。まさにそれだ」


「あの長官殿。ここでは少しマズいかと。研究所に戻り、皆で情報を共有しましょう」


「あぁ。そうだな。すまん。どうしてもここで言いたくなったのだ」


皆、無言のまま食事を再開した。


それから、研究所に戻る途中、皆無言のままだった。


……

そして緊急に関係者が招集される。

会議には政府、軍部、財団、各分野の研究者が参加していた。

遠方の者はネット回線を使い参加する。


「すまない。俺一人で解決できると思っていたが、無理だ。知恵を貸してほしい」

俺は言った。


「君は死に戻りだと聞いたのだが、それを証明するものはあるか?」

東は口を開く。


「ちょっと待ってくれ! このクソがつくほどの堅物がこんな冗談を思いつくと思うのか?」

桜井は笑った。


俺を知る者たちは頷いた。

他の者も、その反応を見て口を閉ざした。


「その時に起きたことの情報共有はできる。ただ今後の行動により、未来変化は起きる可能性はある。問題はそこだ。信じてもらえる根拠も証拠もない」


「君が死に戻りだとすると、未来の我々は滅びているのか?」

東は尋ねた。


「わからない。ただ多くの都市が壊滅し、この研究所も襲われた」


皆ざわつく。


「タイムリミットは?」

誰かが言った。


「おそらく二百日ほど。俺が知っている限りのことを、情報共有する」

俺は起きたことを箇条書きにまとめたレポートを配布した。


「まさか。完全に詰んでいる」


「ここから、どう挽回しろと」


「駄目だ。もう破滅だ」


「だいじょうぶ。私が戦うわ」

美祝は叫んだ。


「駄目だ。お前は次の戦いで壊れる」


「だいじょうぶ。私はお墓に行って、お母さんの愛を知ったことで、強くなれたわ」


「それなら、僕だってそうだ。父さんに嫌われてなかったと知って、強くなれたと思う」


「そうかもしれない。しかし、お前たちにだけ、頼ることはできない」

俺は言った。


「皆さん。

私たちは大人です。

このまま、この二人の子供に、我々の運命を丸投げして良いのでしょうか?

恥ずかしくないですか?

情けなくないですか?」

桜井は叫んだ。


「そうだ! 我々は大人だ」


「そうだ! そうだ!」


「害雷共をぶっ潰してやろう」


賛成派の声が大きくなる一方、頭を抱える者もいた。


やはり、組織とはこういうものだ。


「では、具体的に案を出していこう。案を送ってくれ」

俺は言った。


「すまない。人道に配慮しない方法になるかもしれないが……、それでも良いか?」

首相が言った。


周囲はざわつく。


「まずは、出してみましょう。他の方のアイデアを組み合わせれば、最小限の被害で済ませる方法かもしれない」

俺はそう答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ