18. 魔法都市ルミナス
ガロナの町を出発してから2日目。
私たちは黄金平原の牧場から馬車に乗って、ルミナスの町に向かっていた。
馬車から顔を出すと、遠くの町には空に向かって魔術塔がそびえ立っているのが見える。
「魔術街ルミナスか……」
まだ私が派遣騎士に成り立てのころ、一度だけルミナスの町を訪れたことがある。
王都の鍛冶屋からの依頼で、荷物運びと道中の護衛、あとは見本市で朝から晩まで店番をさせられた。
「でさ~、ずっと鍛冶屋のおじさんの仕事を手伝わされたの。観光することもできなかったよ」
「時間があるなら観光でもする? あたしが町を案内してあげれるけど」
「それいいね。時間があれば魔術街で遊びたいよ」
しばらくして馬車はルミナスの町に到着した。
まだお昼過ぎだから町をゆっくりと観光できそうだ。
「ルミナスに到着だ。お疲れさん、ふたりとも忘れ物はないかい?」
「大丈夫だよ。この町もひさしぶりだな~」
「ここも数年前と比べたら観光客が減ったよなぁ」
「近々戦争になるって噂もありますからね」
「嫌だねぇ、戦争にでもなったら。まぁ楽しんできなよ」
「ありがとう、おじさん」
ルミナスの町はレサリア王国では王都の次に大きな町だ。
町の中央にある魔術学院には、大陸全土から魔術師(魔女)を目指す少年少女たちが集まる。
歓楽街は別名・魔術街とも呼ばれていて、娯楽施設も多く、観光客にも人気の町として知られている。
戦争が始まるという噂もあり、最近は観光客も徐々に減ってきているようだ。
「やっぱり魔法都市っていうだけのことはあるね。けっこう賑わってるじゃん」
「戦争の影響はまだなさそうかな。いろいろ物は高くなってるけどね」
「それは王都も同じだよ……」
「はう~、とりあえずギルドに行こうか」
大通りは人も多く賑やかで大きな町だけのことはある。
とんがり屋根で白色の石造りの家、夜になると煌びやかに町を照らし出す魔鉱石のランプ。
この町のシンボルでもあるガーゴイルの彫像は、町のいたるところに置かれている。
ルミナスの美しい街並みを眺めながら、冒険者ギルドに向かって歩いていた。
途中でレイナがそわそわしながら話しかけてくる。
「ごめん、先に寮に戻っていいかな? ちょっと部屋を片付けたくて」
彼女は少し慌てた様子だ。
きっと部屋が散らかっていて見られたくないからだと思う。
「それなら私はギルドで戦利品を換金してくるよ」
「また後でね。魔術学院の場所は知ってるよね?」
「町の中央通りの先でしょ?」
「門を抜けたら広場に噴水があるから、そこのベンチに座って待ってて」
「わかった、それじゃ後でね」
私はレイナと別れて冒険者ギルドに向かった。
ルミナスには来たことがあるので、ギルドと魔術学院の場所くらいは知っている。
☆☆☆
ここの冒険者ギルドは建物も大きくて立派な造りをしている。
さすがに王都のギルドよりかは小さいけど、装飾だけなら王都よりも豪華かもしれない。
派遣騎士から冒険者、さらに魔術学院の学生たちも利用する。
どことなく魔法を使えそうな格好をした人が多い。
(いつ来ても人が多いな……。座って休憩でもしよっと)
私は待合室のソファーに座って、受付に呼ばれるまで待つことにした。
さすがに大きな町のギルドは人も多いので、待ち時間が長いのはしたかないと思う。
しばらく待っていると、名前が呼ばれたので受付に向かう。
「派遣騎士のセラ様、どうなさいましたか?」
愛想のいい受付のお姉さんに、事情を説明して戦利品の買取を依頼する。
「最近は吸血鬼が出没した話も聞きませんからね。まさか修道院を襲うなんて……」
「これがカーミラが持っていた宝飾品です」
鞄からアクセサリーを出して受付のカウンターに綺麗に並べた。
「ルビーとアメジストの指輪とネックレスですね。鑑定するのでしばらくお待ちください」
「わかりました」
こういう貴重品は大きな町で売るほうが高く買い取ってもらえる。
本当は宝石店に持ち込みたいけど、もしこれが盗品だったら私が兵士に捕まって面倒なことになるかもしれない。
それなら手数料を引かれてもギルドで換金するほうが安全だ。
待合室に戻ってソファーに座ると、ドキドキワクワクしながら査定が終わるのを待つ。
しばらくして受付のお姉さんに呼ばれた。
「鑑定の結果、宝石は全て本物でしたよ。金額はそうですね~」
受付のお姉さんは買取明細を見てにっこりと微笑む。
私は渡された用紙を確認した。
「えーっと……」
金額は全部で6,500ゴールド。
本当はもう少し期待していたけど、そこまで悪くない金額だと思う。
宝石はアメジストよりもルビーのほうが高い。
普通の宝石の指輪とネックレスで、とくに魔力が付与されたりはしていなかった。
もし魔力が付与されていたならさらに高値がついたはずだ。
「ありがとう、この額で問題ありません」
報酬を受け取り鞄に入れた。
それから冒険者ギルドでやることは他にもある。
北の荒れ地のドラゴンについての情報収集をしないといけない。
この受付のお姉さんに聞くのが早いので、ドラゴン退治の依頼について聞くことにした。
「それとドラゴンに関する討伐依頼とか出てませんか?」
「旧演習場に現れたドラゴンのことですか? それなら数日前に騎士団が討伐に向かいましたよ」
「そうですか……。それならもう倒されてるかもしれませんね」
「騎士団の討伐隊となると精鋭揃いですからね。頼もしい限りです」
とくに驚いたりもしなかった。
私が王都でドラゴンの噂を聞いてから7日が経ってしまった。
騎士団や冒険者が討伐に向かうのもおかしくはない。
でもドラゴンと戦わなくて済むので、正直なところ少しホッとしている。
「まだ正確にはわかりませんが、討伐に成功したなら明日にも報告があるはずですよ」
「わかりました。それならまた明日にでも顔を出しますね」
「はい、お待ちしてます」
受付のお姉さんは愛想よくにっこりと微笑む。
私はお礼を言ってギルドを後にした。
ギルドで待たされたので、ちょうどよく時間を潰すことができた。
レイナの部屋の片付けも終わっているころだろう。
私は中央通りを抜けて魔術学院に向かった。




