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「……私もだよ。ルーク君のおかげで寂しくなくなった」
指と指を絡めてお互い見つめ合って微笑む。
私だけじゃなかったようだ。ルーク君が私の中でとても大きな存在になっている。
「それにね今日は昼間に嫌なことがあって……ずっと苛々していたんだけど、ルーク君のおかげで嫌なことがどうでもよくなっちゃった。ありがとう」
「何かあったんですか?」
「……知らないうちに友人たちの喧嘩に巻き込まれちゃったみたいなの。嫌なことを言われたのに頭が真っ白になって何も言い返せなかった。まぁ、あの状態のなっちゃんには冷静な時でも言い返せなかったかもしれないし、もうこれ以上は気にしないことにする。二人で解決してもらうまで会わないように気を付けようっと」
「友人なのに嫌なことを言うんですか?」
「ね。大人って不思議だね」
ルーク君の言う通りだ。本当なら友達に嫌なことを言うのは駄目。
妬み嫉みは誰にでもあるが、でもそれを誰かにぶつけるのは間違っている。今回は明らかに夏希が悪い。
恋愛がドラマや漫画の主人公のようにキラキラした綺麗な恋物語だけじゃないことを子供じゃないので分かってはいる。そうだとしても誰かを本気で好きになったら人は誰しもあんな風に暴走してしまうのだろうか。もしそうなら私は誰も好きになりたくない。夏希みたいにはなりたくない。
「本当にありがとう。ルーク君」
「でも、俺は何もしてませんよ?」
一緒にいてくれるだけで良いのだと言ったりしたらルーク君はどう思うかしら。
ふふふと笑いながら言葉を濁す。そんなつもりはないが、愛が重すぎる女の発言みたいで怖い。まだあどけない少年を不安にさせてしまうのはまずいもの。
「それに男の子からこんな素敵なプレゼントをもらったのも初めてです。何かお礼がしたいわ」
「本当に大したものじゃないですから! それに、それはいつもよくしてもらっているお礼で……」
「だから私もそのお礼のお礼をしたいのよ」
ルーク君は何をあげたら喜ぶかしら。
何をあげても喜んでくれそうだが、高価な物よりも甘いお菓子を喜んでくれそう。シュークリーム、クッキー、チョコやフルーツのタルト。あ、チーズケーキは好きだろうか。ルーク君ならきっと瞳を輝かせて幸せそうに食べてくれるだろう。
「本当に大丈夫です。……あ、」
「何? どうかした?」
「あの、お礼とかじゃなくて、実は今日の実技の試験で最優秀をもらえたんです。それで十日後に行われる学校交流大会のメンバーに選抜されました」
「最優秀!? ルーク君すごいじゃない。でも学校交流大会って?」
「アイゼングレーグにはアイゼングレーグ騎士学校の他に二つ騎士学校があるんですが、その三つの騎士学校から選抜された生徒が学園の代表となって力を競い合うんです」
試験の結果、ルーク君は最優秀をもらったという。
クラスで最も優秀だった生徒一人だけがもらえる賞みたいなものらしく、十日後に行われる学校交流大会も各クラスの最優秀の生徒が代表になるそうだ。つまりルーク君はクラスで一番になり代表者となったわけだ。すごいと褒めるとルーク君は鼻の先をぽりぽりと掻きながら誇らしげに笑う。
ルーク君が頑張り屋だということは知っている。きっと沢山努力して一番を取ったのだろう。
まるで自分のことのように私は嬉しかった。
「それでですね……もし、よかったら大会を見に来ませんか?」
上目遣いで私を見るルーク君に問われ、「見たい」と即答した。
「でも私が行って邪魔にならないかな?」
「邪魔なわけないじゃないですか。俺、ゆいさんが来てくれるなら学校交流会をとても頑張れると思います」
「じゃあ、やっぱりルーク君の応援に行きたい」
応援に行くと言ったものの、そういえば私は行けるのかしら。
ルーク君の部屋には何度も入っているがそこから外には出た事がない。部屋から外に出れない可能性もある。そのことをルーク君に言うと明日ルーク君の学校がお休みの日だから日中に試してみませんかと言われた。
確かに一度試してみた方がいい。そういうことで明日の日中に会う約束をした。
「さてと、じゃあ残りの食事も頂いちゃいましょう。あ、ご飯もうないね。お代わりは……」
「お願いします!」
「はいはい、ちょっと待っててね」
まだ一回目のご飯のお代わりなので大盛りで大丈夫だよね。
大盛りにごはんをよそい、お茶碗をルーク君の前に置いた。「ありがとうございます」とちゃんとお礼を言ってから食べ始めるルーク君をうっとり見つめる。本当に気持ちの良い食いっぷり。
「ゆいさんに晩ごはん作ってもらうようになってから俺絶好調なんです」
「ん?」
「魔力がどんどん上がっているみたいで」
ルーク君にもなぜかは分からないらしいのだが、自分の中の魔力が短期間で増しているのを日々感じているらしいのだ。
自分の両方の手のひらを広げ上に向けるようにした瞬間にバチバチバチと大きな音が鳴り、金色の小さな稲妻のような光が手の平の上で踊るように走る。
「わぁ……」
初めて会った時にも魔力を見せてもらったのだが、その時は指先から火花のようなものが出ていただけだった。それを考えると確かに増している。
「不思議なんですけどゆいさんの作ったごはんを食べる度に俺の身体は変わっていくんです。変ですよね、こんなこと言われても意味分からないですよね」
「そんなことないよ。こっちの世界でもね、確か人間の身体は三ヶ月もすれば新しく生まれ変わるって言われているのよ。それと同じなのかも」
「新しく生まれ変わる……ですか?」
「そう。新陳代謝っていって人間の古い細胞が新しく入れ替わっていくことをなんだけど、ルーク君が言っている身体が変わっていくってそういうことなのかなって」
「そうかもしれません」
そうか。私は今ルーク君にごはんを食べさせ、ルーク君の身体を新しく作り出している。
急に責任のようなものを感じた。そして同じくらい気持ちが高揚している。目の前にいる少年の成長にもしかしたら自分が関係しているのかもしれない。頑張っているルーク君の手助けになれることは私にとってとても嬉しいことだ。
「どうせなら身長も伸ばしてほしいです。そっちもよろしくお願いしますね、ゆいさん」
真面目な顔でもっと大きくなりたいのだと語るルーク君にこらえきれずに笑い出してしまう。
いじけたルーク君の機嫌を直すために食後のフルーツにと冷蔵庫で冷やしておいたオレンジを食べさせて笑ってしまったことを許してもらった。




