07話 龍の使徒
「お主、お主を待っておったんじゃ!」
「どちら様?」
「わしは魔術学習院の学者、レーム・モーゼスじゃ!お主の持ち物を調べるように頼まれたんじゃが、これは凄いぞ!凄い!」
興奮している、その勢いに気圧される。
「その鱗を調べてくれたのか。で、何が凄いんだ?」
「これは祖龍の鱗、エンシェントドラゴンの鱗じゃ!こんなもの初めて見たぞ!」
「あの悪魔もエンシェントドラゴンがどうのこうのって言ってたな」
「お主が会ったのはもしや…いや、今は良いか。これはお主に返す、じゃが龍を倒すという意味がわからんのじゃろ?」
「ああ、どんな奴を倒せばいいかもわからん。というかこの世界のことを何も知らないんだ」
「よし、わしの研究室まで来るんじゃ。色々教えてやろう!」
いきなり、現れたこの老人はレームという学者らしい。ドラゴンがなんなのかも色々と知ってるそうだ。
「あれが学校じゃ!」
レームが指さす先には城のような建物が見える。大きな門をくぐると、制服を着た学生達が校庭で魔法の練習をしていた。
「先生、おはようございます。」
二人の女生徒がレームに挨拶をしている。
レームに連れられ校舎の中に入ると、懐かしい感覚を覚える。
「学校ってのはどこも同じなんだな…」
教室の前を通ると生徒と何度か目があう、こんな格好のやつが学校に来たら怪しまれるな…
「レーム先生、そちらの方は?」
ドレスを着た、巻き髪のばあさんが俺を怪しんだ目で見ている。
「そんな目で見るでない。わしの客じゃよ」
「ちょっと、あなた!その汚れたブーツを脱ぎなさい!校内に泥を持ち込まないでくださる!」
顔を真っ赤にして、今にもひっぱたかれそうな勢いだ。
「悪い」
「謝るんじゃなく、履き替えなさいと言っているんです!それにあなた身につけているものが全て小汚い!ここは神聖な魔術を学ぶ場所、適切な格好に着替えなさい!」
「まあ、またんか!わしの研究所で話をするだけじゃ」
「それでもですね!」
「こやつを怒らせると話が長い。もう行くぞ」
「ああ。いいのか?…」
「こら!あなた、待ちなさい!話は終わってないですよ!!」
「はあ…やかましいやつじゃ…そして、わしの研究所へようこそ!」
その部屋はたくさんの本が並べられた、図書室のような部屋だった。
「まあ、ここに座れ。茶はいるか?」
「いや、結構だ」
「そうか。それじゃあさっそく本題といこう。まあ最近のことから話すぞ、不死身の魔物が色んなとこで見つかっとる。それがたぶん、お主が探しとる龍じゃ」
「ドラゴンってのは、火を吹いて鱗に覆われてて空を飛ぶやつのことだよな?」
「ん?それはワイバーンじゃな。龍はお主のその鱗の持ち主、祖龍から生まれた奴らのことじゃよ。本当の龍はもう数匹しか生きとらん、それに強大すぎる力を自分の思うままに使う奴は祖龍に狩り尽くされたからな。今生きとる奴はこの世界とうまくやっておる、あのまがい物以外はな!」
「ウロボロスとかいうやつか?」
「知っとったか。そうじゃ、ウロボロス。あの罰当たりなまがい物が弱い生き物に龍の力を与えとるんじゃ。わしらはその使徒供を封印することはできても、殺すことはできないんじゃ。だがお主のその鱗の力は祖龍の力を持っとる、それがあれば殺すこともできるじゃろう。しかし、あの魔王がそれを渡すとはな…」
「あの悪魔を知ってるのか?」
「知っとるも何も、奴を倒した勇者の仲間の一人じゃからな、わし」
「えっ…あんた、いやあなたもしかして凄い人なのか?」
「うむ。年老いてしまったが、全盛期はかなり強かったぞ!」
「そうなのか…」
確かに、老いを感じさせないぐらい、はつらつとしている。
「この街の奴はだいたいわしのこと知っとるんだがの。本当に別のところから来たんじゃな。でじゃ!その魔王に龍を倒せと言われたんじゃったな。全く間抜けな奴じゃ自分であの力を与えといて、裏切られて、見ず知らずの奴に倒してくれと頼み込むとはな!ワッハッハ! ところでお主、どうやって奴に会ったんだ?それが不思議でな、奴は死んだはずなのに」
「俺は死んだんだと思う、で魂を引きずり込んだとか言ってたな。その場所で色々言われて、気付いたらここに来てた」
「死者の世界で会ったと?それじゃあお主、転生してきたのか!勇者の奴も同じことを言っとったんじゃ!そ奴は神様に力を与えられたらしいが。お主はあの魔王か…」
「で、結局俺は何をすればいいんだ?ドラゴン?てのは俺の知ってるドラゴンじゃないし、じゃあどんな見た目の奴がいるんだ?」
「うむ、元々小さい生き物が異常に巨大で強力になり、そして不死身になった奴らを龍の使徒と呼んどる。このあたりに出たのはジャイアントスパイダーじゃな、おおかた奴は使徒じゃろう。奴は雪山に巣を作っとる」
「蜘蛛が雪山にいるのか…」
「そう、それ自体がおかしいことなんじゃ。龍の力を持っとるに違いない、それに奴を討伐しに行った手練れ供が誰も帰って来とらんそうじゃ。だがお主なら倒せるんじゃないかのぉ?」
「まあ、やってみてもいいが…」
「まあそんなに焦らなくてもよいがな。あの雪山の方はそんなに人が近づかん場所、じゃが王都の方に続く道に降りてくると面倒な事になるぞ。まあそうなる前に倒してくれると助かるんじゃ」
具体的な話がわかってよかった、やることも見えて来たな。
「で?お主はこれからどうするじゃ?」
「ギルドに行って見たいな。それから明日、その蜘蛛を倒しに行ってみるよ」
「ううむ、それは無理じゃぞ、あの蜘蛛を倒しに行くにはちゃんと準備していかんとならん。それに、ギルドに出とるジャイアントスパイダーの討伐依頼を受けるにも、新入りはそんな仕事受けられんぞ。そうじゃ、わしがついて行ってやろう。その鱗の力を見て見たいしな!」
「いいのか?」
「うむ!それでは善は急げじゃ!早速ギルドに行こう!」
「グゥ〜…」
「おっと、その前に昼飯にしよう!お主も来るんじゃ!」
そう言って、研究所を後にする。
「食堂へ行こう!生徒の連中はまだ飯の時間じゃないから空いとるじゃろう」
学食か、こういう機会は大人になるとなくなってしまうしな。それに前線にずっといたせいで同じレーションしか食べれなかったが久々にそれ以外を食べれそうだ。
「うむ、ついたぞ。お主はそこに座っておれ!わしが持って来てやろう」
「いや、俺も…」
そのまま小走りで向かってしまう、何かを注文してるみたいだ。元気な爺さんだな…そう思いながらヘルメットと手袋を外す。
「あなた」
「ん?」
「ごめんなさい。この辺りの人じゃなさそうね」
そう言って話しかけて来たのは、おっと、凄いな…こんな巨乳そうそう見れないぞ…いや、違う。目の前にはとても魅力的な若い女性が立っている。
「俺はあやし…」
「お主、待たせたのぉ!うむ、どうしたんじゃ?」
「あ、ああ…レーム先生のね。お邪魔したわね」
「うむ。ほれお主、これがうまいんじゃ!」
「これは…ハンバーガー…」
意外だ、こっちも俺の地元と同じような食べ物があるみたいだ。これは少し安心だな…いや?…なんでだ?…
その後食事を済ませ、ギルドに向かうことにする。その道中何度も挨拶されてるあたり本当に凄い人らしい。そして、朝来た建物の表に立つ。
「よし、ゆくぞ!」
そう言って扉を開く。
「ここが…」
中は石造りの壁にステンドグラスの窓、かなり綺麗な内装だ。
「こやつを登録をしたいんじゃが?」
「はい、登録ですね。こちらにどうぞ!」
耳の長い綺麗な女性が案内してくれる。
「面接か…緊張するな…」
「まあ気張らんでもよい、できることを調べられるだけじゃからな」
「ああ…」
詮索された時の対応を考えながら、部屋に入る。




