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プロローグ:星の見えない夜に(ハル視点)
プロローグ:星の見えない夜に(ハル視点)
暗闇は嫌いだ。
そこにいると、自分の輪郭まで溶けて消えてしまいそうになるから。
パソコンのモニターが放つ、白々としたブルーライトだけが、六畳一間のアパートを冷たく照らしている。
点滅を繰り返す、テキストエディタのカーソル。
その横の文字数は、もう何時間も「ゼロ」のままだ。
「……書けない」
ぽつりと溢れた独り言は、壁にぶつかって寂しく消えた。
かつて、一度だけ文学賞の小さな賞をもらった。
あのときは、自分の言葉が世界に届いたような気がした。
けれど、二作目が書けなくなり、世間から忘れ去られるのは一瞬だった。
「才能なんて、最初からなかったんだ」
過去の栄光を悔やんでは、毎夜のように自分を責めた。
深夜のアルバイトで擦り切れた体を引きずり、排気ガスで濁った都会の夜空を見上げては、「明日なんて来なければいい」と本気で願っていた。
明日を信じるのが、怖かった。
自分の未来を、自分で呪っていた。
そんな泥のような僕を。
底の抜けた暗闇にいた僕を。
アキだけが、愛し続けてくれた。
「今あなたに伝えられるだろうか。
不器用な僕だけど、ちゃんとあなたに届くように」
これは、星の見えない夜を彷徨い続けた僕らが、もう一度笑い合えるようになるまでの、不器用な約束の物語だ。




