幼馴染(8歳)との秘密の契約(パートナーシップ)
自作のキメラ魔導PCで『クリプト・コイン』のマイニングを始めて数週間。
計算処理は順調だが、ジャンクパーツの寄せ集めゆえの弊害が出ていた。猛烈な「熱」だ。オーバークロックした演算魔石が焼け焦げる寸前で、ファンが常に爆音を立てている。
「ヤバいな……。このままじゃ熱暴走でパーツが死ぬか、親に見つかるかどっちかだ」
俺が頭を抱えていたその時。
ギィィ……と、小屋のボロい扉が開いた。
「アルト、こんな夜更けに何やって……って、何その怪しく光る機械!」
入ってきたのは、同じ限界ニュータウンに住む同い年の少女、クロエだった。
銀色の髪に、ちょっと勝気な瞳。かつては王都で名を馳せた凄腕冒険者の娘……なのだが、王国が強行したインボイス制度の煽りをもろに受けて親が廃業。今ではうちと同じか、それ以上の極貧生活を送っている。
「ち、違うぞクロエ! これは冬休みの自由研究的な……」
「嘘おっしゃい! 村長んとこにある魔導通信機より凄い音鳴ってるじゃない! まさかあんた、また悪いことして……」
クロエが声を荒らげようとした瞬間、俺は彼女の口を塞ぎ、耳元で囁いた。
「シーッ! 頼む、親には言わないでくれ。これは……金を稼ぐための機械なんだ」
「えっ……? 金……?」
その単語を聞いた瞬間、クロエの瞳の色が変わった。
「……いくら稼げるの?」
「今はまだ仕込みの段階だけど、上手くいけば借金を全部返して、お釣りが来るくらいだ」
クロエはゴクリと唾を飲み込み、自分の着ているツギハギだらけの服の裾をギュッと握りしめた。
「……うちのパパ、最近はポーションの空き瓶を洗う日雇いに行ってるの。私、もうパパのあんな情けない背中見たくない」
クロエは真剣な眼差しで、俺のキメラ魔導PCを見つめ直した。
「これ、すごく熱くなってるんでしょ? 氷魔法は使えないけど、裏の井戸から冷たいお水を何度も運んで冷やすことくらいなら、私にもできる。あと、怪しまれないように見張りもする」
「クロエ……?」
「だから、私にも一枚噛ませなさい。利益の20%……いや、15%で手を打つわ」
8歳児とは思えない、切実かつ生々しい交渉術。
さすがは極貧限界集落で育った幼馴染だ。話が早くて助かる。
「……10%だ。その代わり、冷却用の水汲みと、機材のメンテナンスの手伝いも頼む。実質的な『水冷クーラー』担当ってわけだ」
「交渉成立ね」
パチンッ、と俺たちは小さな手を合わせてハイタッチした。
こうして俺のマイニング事業に、物理冷却&見張り担当の優秀なヒロイン(共同経営者)が加入したのだった。




