8歳児、ジャンク魔導具でマイニング(錬金)を始める
あの絶望の「一億ゴールド追証事件」から5年。
俺、アルトは無事に8歳になった。
現在の借金残高:99,900,000 G。
この5年間、自動売買AIと手動デイトレードをフル稼働させ、親父と母さんも血吐く思いで働いて、なんとか「10万ゴールド」は返済した。だが、高すぎる利息のせいで元本は遅々として減らない。完全なジリ貧だ。
「アルト、ごはんだよ……今日は特売だったスライムの干物よ……」
「お、おう……(前世の限界飯より質素だな……)」
ボロボロの長屋の食卓で、塩辛いだけの干物をかじる。
このままじゃダメだ。小手先のトレードじゃ、魔王軍が引き起こす異常なインフレと借金の利息に押しつぶされる。もっと根本的な『デカいシノギ』が必要だ。
食後、俺は部屋の隅に積まれたガラクタの山に向かった。
ギルドの裏口からタダ同然で引き取ってきた、廃棄寸前の「ジャンク魔導板」や「魔力供給ユニット」の山だ。
(トレードの処理速度を上げるには、どうしてもハイスペックな環境がいる。だが新品を買う金なんてねえ。なら、組むしかないだろ)
俺は小さな手で工具を握り、魔力供給ユニットを分解し始めた。
冷却ファンにこびりついたスライムの粘液を落とし、軸のブレを調整して組み直す。次に、旧世代の演算魔石と、描画処理に特化したグラフィック魔石を、マザーボード代わりの基板に無理やり直列で繋ぐ。
ボトルネックは多いが、俺の前世の知識で魔力回路をいじれば、まだ現役で戦える。
電源を入れると、青白い魔力の光と共に、自作のキメラ魔導板が静かに起動した。
「ふぅ……(さて、これで準備は整った)」
俺が狙っているのは、ただの株や魔石のトレードじゃない。
魔王軍が密かに流通させている暗号通貨、『クリプト・コイン』のマイニング(採掘)だ。
王国の法整備が追いついていない今、このグレーゾーンの仮想通貨こそが、一億ゴールドの借金を吹き飛ばす唯一のレバレッジになる。
「さあ、働け俺の自作魔導PC。一億の借金を溶かすための、反撃の狼煙だ」
8歳の俺は、ジャンクパーツで作られた端末の青い光に照らされながら、限界ニュータウンの暗闇の中で不敵に笑った。




