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転生先は超・物価高!? 〜フルリモート魔王軍と戦う限界ニュータウン異世界〜  作者: 沼口ちるの


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6/16

3歳児、親父の『異世界FX(レバレッジ1000倍)』爆死に絶望する

あれから3年。

俺ことアルトは、無事に3歳の誕生日を迎えた。

「ましゅー、おいちいね!」なんて幼児語を器用に操りながら、裏では密かに魔導板で複利を回し続ける日々。順調に資産は増え、限界ニュータウンでの生活も少しはマシになる……はずだった。


ある日の夕方。

親父が、この世の終わりのような顔をして帰ってきた。その手には、震える魔導板が握られている。


「あ、あなた……? どうしたの、そんな顔して。まさかまたリストラ……?」

母さんが不安そうに声をかけると、親父は膝から崩れ落ち、ボロボロと大粒の涙を流し始めた。


「ごめん……母さん……アルト……。俺、とんでもないことをしちまった……」


嫌な予感しかしない。俺の【せいしん】ステータスが激しくアラートを鳴らしている。

俺はトテトテと歩み寄り、親父が落とした魔導板を覗き込んだ。


そこに表示されていたのは、真っ赤な文字で書かれた『強制ロスカット執行のお知らせ』。

そして、請求金額の欄には――


【 追証(借入残高): 100,000,000 G(一億ゴールド) 】


「は……?」

思わず幼児のフリを忘れ、低い声が漏れてしまった。


一億!? なんだこの天文学的な数字は!

親父の泣き言を翻訳すると、こうだ。

最近ギルドで流行っていた『魔石FX(外国魔石証拠金取引)』というハイリスク・ハイリターンの投機に手を出したらしい。しかも、俺がコツコツ貯めた資産を勝手に「証拠金」として突っ込み、上限いっぱいの【レバレッジ1000倍】をかけて大勝負に出た。


そこへ運悪く、魔王軍の広報アカウントが「来月から魔石の輸出規制を検討中」というフェイクニュースを魔導SNSにポスト。

結果、相場は一瞬で大暴落フラッシュ・クラッシュを起こし、親父のポジションは消し飛び、莫大な借金だけが残ったというわけだ。


「ギルドの証券担当が、『今なら絶対儲かる』って言うから……っ! 家族に楽をさせてやりたかったんだぁぁっ!」

「あなたあああああっ!!」


抱き合って泣き叫ぶ両親。

俺は静かに魔導板の画面をスワイプした。


……バカ野郎。投資と投機は違うって、前世の金融庁も口を酸っぱくして言ってただろ。

しかも、家族名義の口座を勝手に担保にするなんて、金融リテラシーの欠如どころの騒ぎじゃない。これはもう、魔王軍のサイバー攻撃なんかよりよっぽどタチが悪い、身内からの核攻撃だ。


一億ゴールド。

普通の冒険者が一生かけても稼げない狂気の額。

俺のアビリティ『FP1級』をもってしても、即死レベルの特大デバフである。


「ぱ、ぱぱ……めっ、だぞっ!(ふざけんなクソ親父!! お前のせいで俺の異世界ライフ、ガチのハードモードに突入したじゃねえか!!)」


俺の愛らしいお説教は、一億ゴールドという絶望の前に、あまりにも無力だった。

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