最強のデバフ『リボ払い』を一括解除!
「ひ、ひぃぃぃ!? なんだこの口座残高! バグか!? 魔王軍のサイバーテロか!?」
翌朝、リビングから親父の悲鳴が響き渡った。
無理もない。なけなしのヘソクリだった銀貨数枚が、一晩のうちに金貨の山(デジタル上の数字だが)に化けていたのだから。
「あなた、どうしたの?……えっ、ウソ。これ、全部本物の残高?」
母さんも魔導板を覗き込み、目を丸くしている。
ベビーベッドの中でミルクを啜りながら、俺は内心ガッツポーズを決めた。
(ふっふっふ、俺が組んだ自動売買アルゴリズムが、寝ている間もコツコツと小銭を拾い集めた結果さ。チリツモの複利効果、舐めんなよ)
「こ、これが本当に使える金なら……! ずっと欲しかった『炎の魔剣(ローン60回払い)』が買えるんじゃないか!?」
親父が興奮気味に鼻息を荒くする。
ブーッ!!
俺は思わず、飲んでいたミルクを吹き出しそうになった。
(バカ野郎!! なんで臨時収入が入った途端に、さらにローンを組もうとするんだ! お前のその『魔導具リボ払い』のせいで、毎月の家計が火の車なんだろうが!)
俺の【せいしん】ステータスが、親父のマネーリテラシーの低さに警鐘を鳴らしまくっている。
高金利の借金は、RPGで言えば毎ターン最大HPを削られる『猛毒』以上の極悪デバフだ。いくら俺が自動売買で稼いでも、穴の空いたバケツに水を入れるようなもの。
親父が魔剣の購入ボタンを押そうとするその瞬間、俺はベビーベッドから身を乗り出し、必死に手を伸ばした。
そして、親父の持つ魔導板の画面下部――『借入金一括返済』のボタンに向けて、渾身の力を込めて指を振り下ろす!
ターーップ!!
ピロリンッ♪
『ご清算ありがとうございました。魔導具リボ払い残高:0G』
「ああああああああっ!? 俺のへそくり残高がごっそり減ってるぅぅぅ! しかも勝手にリボ払いが完済されてるぅぅ!?」
親父が頭を抱えて絶叫する。
「でもあなた、これで毎月カツカツだった利息の支払いから解放されたのよ? 結果的にはすごく助かるじゃない!」
母さんは安堵の表情を浮かべていた。さすが母さん、分かってる。
「だぁー!(親父、借金という特大デバフは解除してやったぞ。さあ、ここからは固定費を見直して、本格的に資産を増やすフェーズだ!)」
無事にリボ払いを完済し、俺は満足げにしゃぶる用のおしゃぶりを口にくわえた。
数字を増やすのも楽しいが、まずはマイナスをゼロに戻すのが鉄則。限界ニュータウンでの資産形成の道のりは、着実に次のステージへと進み始めていた。




