ステータス・オープン!……って、広告付きプランかよ!
転生して半年。俺は順調にハイハイをマスターし、離乳食(※原材料費高騰により、スライムゼリーの比率が多め)を食べるまでに成長していた。
そろそろ異世界モノの定番、アレを試す時期だろう。
俺はベビーベッドの中で誰にも見られないよう、こっそりと念じた。
(ステータス・オープン!)
ピロリンッ、という軽快な効果音と共に、空中に半透明のウィンドウが浮かび上がった。
青い背景に白い縁取り、どこか懐かしさを感じるドット絵風のフォント。おお、この王道RPGライクなレイアウト、ゲーマーの血が騒ぐな!
ワクワクしながら画面の文字を追っていく。
【名前】 アルト
【ジョブ】 すっぴん(※ギルド未登録・非課税世帯対象)
【Lv】 1
【HP】 5 / 5
【MP】 10 / 10
【ちから】 1
【すばやさ】 1
【たいりょく】 2
【まりょく】 3
【せいしん】 999 (※前世のブラック企業での社畜経験によりカンスト)
【そうび】
みぎて:なし
ひだりて:なし
あたま:なし
からだ:よだれかけ(防御力+1 / 耐性:ミルクこぼし)
アクセサリ:なし
【アビリティ】
・『たたかう』
・『ぼうぎょ』
・『アイテム』
・『確定申告(青色)Lv.1』
・『FP1級』
・『NISA枠(非課税投資枠)拡張』
……おい、待て。
黒魔法は? 白魔法は? 召喚魔法は?
何度見返しても、そこにあるのは異世界のモンスターをねじ伏せるチートではなく、現代日本の過酷な資本主義を生き抜くための、ガチガチの「金融・税務アビリティ」だった。
しかもステータス画面の右下には、小さく点滅する文字でこう書かれている。
『※このウィンドウは基本無料(広告付き)です。プレミアムプラン(月額500G)への課金で、魔王軍スポンサーの広告を非表示にできます』
UIは王道レトロRPG風なのに、システムが完全に現代の無料アプリ仕様!世知辛すぎるだろ!
「あなた、今月の布オムツ代、どうやり繰りしようかしら……」
「うーん、俺のミスリル鉱山での日雇いバイト、AIゴーレムの導入でシフト減らされちゃってさ……」
隣の部屋から、両親の切実な会話が聞こえてくる。
俺は小さな拳をギュッと握りしめた。
分かったよ。俺に与えられた使命は、魔王を伝説の剣で倒すことじゃない。
この限界ニュータウンの家計を、そして崩壊寸前の異世界経済を、俺のアビリティで「立て直す」ことなんだな……!
「だぁー!(親父、そのリボ払いは今すぐ一括で返済しろ! それから母さん、まずは家計の固定費の見直しからだ!)」
俺の言葉にならない説教は、今日も虚しくスライムゼリーの空き瓶に響くのだった。




