第2話 はじめての狩り
「よし、外へ行くぞ」
「軽いのう」
メルグが呆れたようにぷるぷる震える。
「いやでも追加ガチャだぞ?」
「主殿、完全にソシャゲ脳じゃなぁ」
「なんで異世界のスライムがソシャゲ知ってんだよ!?」
「知識こそ力じゃよ」
「便利な言葉みたいに使うな」
俺は立ち上がり、ダンジョンの出口らしき通路へ向かった。
石造りの通路は薄暗く、ひんやりしている。
ところどころ壁が崩れていて、いかにも“初心者ダンジョン”って感じだ。
「というか、ここどこなんだ?」
「森の地下じゃな」
「おお、異世界っぽい」
「異世界なんじゃがのう」
通路を進む。
やがて前方に光が見えた。
外だ。
思わず駆け出す。
そして――
「うおぉ……!」
森だった。
木々は空高く伸び、葉の隙間から木漏れ日が差し込んでいる。
風が気持ちいい。草の匂い。鳥の鳴き声。
ゲームでも映画でもない。
本物の異世界。
「すっげぇ……」
気づけば自然と笑っていた。
ブラック企業と薄暗いアパートを往復していた前世では、こんな景色をゆっくり見る余裕なんてなかった。
「異世界、来ちゃったんだなぁ……」
「感動するのは良いが、死ぬでないぞ」
「油断は禁物だな」
するとメルグがぴたりと止まった。
「……来るのう」
「え?」
ガサガサ、と茂みが揺れる。
次の瞬間、小さな影が飛び出してきた。
「ギギッ!」
現れたのは、緑色の小鬼だった。
身長は小学生くらい。
ボロ布を巻き、木の棒を握っている。
「ゴブリンじゃん!」
「低級魔物じゃな」
「うわ、異世界感すげぇ!」
「感動するのはよいが、武器を持っとるぞ」
「えっ」
次の瞬間。
「ギギィッ!!」
「うおっ!?」
ゴブリンが棍棒を振り回しながら突っ込んできた。
慌てて横へ飛ぶ。
木の棒が鼻先を掠めた。
「危ねぇ!!」
「だから言ったじゃろうに」
ゴブリンが再び飛びかかってくる。
まずい。武器なんてない。真正面からやったら普通に負ける。
「メルグ! なんとかしろ!」
「嫌じゃよ」
「は!?」
「主殿が戦わねば意味がないからのう」
「いや今瀬戸際だぞ!!」
「経験も積まねばならんしなぁ」
ゴブリンの棍棒をギリギリで避ける。
危なっ!?
普通に死ぬ!!
「それに――」
メルグが片眼鏡をクイッと上げた。
「魔王たる者、強くあらねばならんのじゃよ」
「そんなこと言ってる場合か!!」
ゴブリンが目前まで迫る。
まずい。
そう思った瞬間。
「左へ跳ぶのじゃ!」
反射的に飛ぶ。
次の瞬間。
ゴゴゴゴッ!!
「ギッ!?」
地面から石柱が飛び出した。
ゴブリンの顎へ直撃。
そのまま吹き飛び、木へ激突した。
「おおっ!?」
「ダンジョン編集の簡易応用じゃな」
「いや手伝ってんじゃねぇか!」
「死にそうじゃったからのう。死んでしもうたら全てが終いじゃ。」
諭すような真剣な口調でメルグが呟いた。
ゴブリンはまだ動いていた。
「ギ……ギィ……」
ふらつきながら立ち上がる。
「主殿、とどめじゃ!」
「えぇ!?」
「ダンジョン魔王なら覚悟を決めんか」
「その肩書きまだ受け入れきれてないんだよ!」
ゴブリンが再び飛びかかる。
もう迷ってる暇はなかった。
「うおおおお!!」
近くに落ちていた石を掴み、思い切り振り下ろす。
ゴッ!!
「ギッ――」
鈍い音。
ゴブリンが崩れ落ちた。
森に静寂が戻る。
「…………」
俺が殺したんだ。
じわり、と嫌な汗が滲む。ゲームではない、本当に生きてる存在だった。
ピコンッ。
ーーー
【ゴブリンの死体】を獲得しました。
ダンジョンコアへ変換可能です。
ーーー
「おおっ。DPの源ゲットだぜ!!」
思わず目が輝く。
「切り替えが早いのう」
「いやだってDPだぞ?追加ガチャ回せるんだぞ?」
「主殿、魔王適性が高すぎではないかのう……」
若干引いたような声で、メルグが呟いた。
皆様のブックマーク等が励みとなっております。引き続きよろしくお願いいたします。




