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第30話「浴衣のこと」

 かあさんが浴衣を出してきた。


 コンのは紺色に白い模様。ポンのは薄い水色。チビのは去年のもので、藍色に金魚の柄だった。


 チビが羽織ってみた。


「着られる?」とかあさん。


 丈がすこし短かった。袖も、手首よりずいぶん上にきている。


「……着られる」


「無理してるね」


「着られるよ!」


 コンが横から見て、「袖が短い」と言った。チビがにらんだ。


「大きくなった証拠でしょ」


「そうだけど」


 かあさんがしばらく考えて、「仕立て直しは間に合わないから、今年は新しいのにしましょう」と言った。チビの目が輝いた。


「あたらしいの!」


「何色がいい?」


「あかい!」


「男の子で赤はねえ……」とコン。


「いいじゃん、あかが好きなんだもん」


 結局、赤みがかった茶色の浴衣になった。チビは「あかに近い」と言って納得した。


 ポンの水色の浴衣は、ぴったりだった。去年と同じ丈で、同じ幅で。


「ポン、全然大きくなってないね」とチビ。


「……うん」


 ポンはすこしだけ複雑な顔をした。

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