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第23話「菖蒲のむらさき」
集落のはずれに、菖蒲が咲いていた。
田んぼのそばの湿ったところに、紫と白の花がたくさん並んでいる。すっと伸びた細い葉っぱと、すっと伸びた茎と、その先に凛とした花。
チビが走り寄った。
「むらさきだ!」
「静かに、踏まないで」
コンがあわてて止めた。チビはぎりぎりのところで止まって、前のめりになりながら花をのぞき込んだ。
「ひらひらしてる」
「花びらが垂れ下がってるんだよ」
菖蒲の花びらは、外側にふわりと垂れていた。紫の濃いところと薄いところが混ざって、根元に黄色と白の模様がある。
「きれい」
チビがひそひそ声で言った。さっきまでの勢いはどこへやら、なんとなく静かにしなければいけない気がしたらしい。
ポンが隣に来て、しゃがんで花を見た。
「お姫様みたいだね」
コンとチビが顔を見合わせた。ポンがそういうことを言うのは珍しかった。
「ポン、そういうこと言うんだ」
「たまには」
三匹はしばらく、菖蒲の前にしゃがんでいた。風が吹いて、花がゆらりと揺れた。




