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第22話「あまい香り」
朝、目が覚めたら、窓から知らない香りが入ってきた。
甘くて、白くて、すこし酸っぱいような、不思議な香り。
チビが布団から跳び起きた。
「なんのにおい?」
コンが窓を開けて、外を見た。
「夏みかんの花だよ。咲いたんだね」
三匹で外に出た。庭の隅の夏みかんの木に、小さな白い花がたくさんついていた。星みたいな形で、ちいさくて、それなのにあんなに遠くまで香りが届く。
「ちっちゃいのに、においがすごい」
チビが花に鼻を近づけた。
「うわ、つよい」
コンも嗅いだ。甘くて、すこし爽やかで、胸のあたりがふわっとなる香りだった。
ポンは木の根元に座って、目を閉じていた。
「ポン、嗅がないの」
「ここでじゅうぶん」
風が吹くたびに、香りが波のように広がってくる。ポンはそれをただ、受け取っていた。
朝ごはんのあいだも、縁側にいるあいだも、夏みかんの香りはずっとただよっていた。
チビが「ずっとこのにおいがしてたらいいのに」と言った。コンは「花が咲いてるあいだだけだよ」と答えた。チビはすこし残念そうにして、でもまた深く息を吸った。




