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寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第9章 隠密カイル、世界諜報網「ローゼン・リークス」の構築

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55話 聖女リリィの「M&A(吸収合併)」

全人類のスコアリング制度を導入し、善行すらもローゼン・ポイントの「歩合制」へと変貌させてから数日。私の覇道ビジネスの前に、最後にして最大の「非効率な聖域」が立ちはだかっていた。それは、かつて私を「悪役」と断じ、愛と祈りによる無償の救済を説いていた、聖女リリィが率いる聖教国である。


「……マックス。あの『祈り(コスト・ゼロ)』で人を救えると豪語している宗教法人、最近の収益状況はどうなっているのかしら? 確か、彼らの信徒の八割は、既に我が社の『プレミアム会員』に移行しているはずだけど」


私が冷徹に、聖教国の金色の紋章が刻まれた財務諸表(※カイルが盗み出したもの)をシュレッダーにかけながら問いかけると、マックスは無慈悲な分析結果を提示した。


「……CEO。聖教国は現在、深刻な『祈り離れ』に直面しています。信徒たちは、『神に祈って奇跡を待つより、セシリア様に課金して即日完治する方が合理的だ』と気づき始めました。現在、教会の献金箱には、ローゼン・グループのチラシと、換金価値のない『懺悔のメモ』しか入っておりません」


「……プッ、あははは! 神様への愛も、即効性タイパには勝てなかったわけね。……いいわ、マックス。いよいよあの『不良在庫(聖女)』を買い叩きに行くわよ。……愛の力で世界を救うなんていう、独占禁止法違反の疑いがあるビジネスモデルを、私が適正な『ライセンス商売』に作り変えてあげるわ」


数時間後。ローゼン・タワーの特別応接室。そこには、純白の法衣に身を包み、涙を浮かべて震える聖女リリィの姿があった。


「……セシリアさん。どうして……どうしてこんな残酷なことができるのですか! 人々の心から信仰を奪い、すべてをお金で縛るなんて……。神様が、きっと貴女に罰を与えます!」


「……寄るな、聖女。貴方の言う『罰』って、どの程度の損失コストのことを指しているのかしら? ……いい、リリィ。貴方が無料で配っていた『癒やしのヒール』。あれのせいで、地域の魔導病院の経営がどれだけ圧迫されていたか考えたことがある? 貴方の無償の愛は、市場を破壊する『不当廉売ダンピング』なのよ」


「……そ、そんな……。私はただ、苦しんでいる人を助けたくて……」


「……助けたいなら、組織の歯車になりなさい。……リリィ、貴方の聖女としてのブランド価値、そしてその『奇跡』の独占使用権。……我が社の『ヘルスケア・エンターテインメント部門』として、一〇〇〇億ローゼンで吸収合併(M&A)してあげるわ」


「……吸収合併……!? 聖なる力を、商売にするというのですか!?」


「……ええ。……これからは祈る必要なんてないわ。……スマホの画面をタップすれば、貴方のホログラムが現れて『癒やしの言葉(広告付き)』を掛けてくれる……。……これこそが、私の提唱する『聖女のデジタルトランスフォーメーション(DX)』よ」


その時、応接室の重厚な扉を、後光のような眩しさと共に突き破って、アルヴィスが乱入した。

 彼は今、聖教国の騎士たちを再教育するために、「聖なるプロテイン」を全身に塗りたくった「筋肉の大天使」のような姿をしていた。


『リリィーー!! 精神スピリットを鍛えるなら、まず外殻マッスルを鍛えろーー!! 祈りのポーズで静止するより、その姿勢のまま一〇〇キロのバーベルを挙げる方が、神への情熱が物理的に伝わるぞ!! さあ、俺と一緒に「ハレルヤ・ベンチプレス」だ!! 限界を超えた時、そこに真の福音パンプアップが待っているんだあああ!!』


「寄るなイケメン! 貴方のその『ハレルヤ・ベンチプレス』、聖教国の騎士たちが全員、十字架を背負ったままスクワットを始めて、教会の床が抜けているじゃないの! ……マックス。リリィの『奇跡』とアルヴィスの『筋力』をパッケージ化して、新サービス『マッチョ聖者による即時救済デリバリー』としてローンチなさい。……一回の救済につき、二万ローゼンの利用料を徴収するのよ」


『……っ! 俺の筋肉が……奇跡のブースターに……! セシリア様、俺は今、全人類の『カルマ』をダンベルのように軽く感じているぞおおお!!』


リリィは、目の前で繰り広げられる「筋肉と資本の融合」という地獄のような光景に、ついに力なく膝をついた。


「……あぁ……。愛も……祈りも……すべてはセシリア様の帳簿の中へ……。……わかりました。……私、頑張ります。……みんなを笑顔にするための、高品質な『商品』になります……」


「……及第点ね、リリィ。……マックス。彼女の初仕事は、新発売の『聖女の涙入り・高濃度エナジードリンク』の宣伝よ。……一滴の涙に、一〇万ローゼンの付加価値を乗せて売り出しなさい」


悪役令嬢セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ。

 彼女の覇道は、ついに形のない「信仰」すらもM&Aで手中に収め、世界から「奇跡」という名の不確定要素を排除した。


「……さあ、次の決算を始めましょう。……リリィ。……次は『地獄の不動産開発』よ。……悪いことをした人が行く場所があるなら、そこを『更生型・会員制リゾート』として再開発してあげるわ」


聖女の慟哭すらも、セシリアの計算機(電卓)の上では、心地よい収益のメロディとして鳴り響いていた。

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