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寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第9章 隠密カイル、世界諜報網「ローゼン・リークス」の構築

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43話 王族という名の「不良債権」の末路

ローゼン・タワーのロビー。かつてこの国で最も高貴とされた青い血を引く男が、今、モップを手に立ち尽くしていた。


「……な、なぜだ。なぜ、第一王子の僕が……こんな、平民の履いた泥を拭き取るような真似を……っ!」


元婚約者、エリオット。かつて私を「悪役」と呼び、聖女リリィとの真実の愛(笑)を叫んで婚約破棄を突きつけた男である。だが、王家の資産をすべて私に差し押さえられ、巨額の「慰謝料(負債)」を返済できなくなった彼は、今や我が社の「一階ロビー・清掃担当」という、最底辺の非正規雇用枠に収まっていた。


「……マックス。あの『動く障害物エリオット』の清掃効率はどうなっているかしら? 手が止まっている時間が一分を超えているけれど。……彼の時給、一分単位で減額デバフなさい」


私が二階のテラスから冷徹に見下ろすと、マックスは無表情にストップウォッチを止めた。


「……CEO。エリオット氏の現在の清掃スコアは、新人研修生を下回る『測定不能(Eランク)』です。……加えて、通りかかる女性社員に『僕はいつか王座に戻る男だ』と不審な勧誘を行っており、コンプライアンス違反の累積で、既に今月分の給与は『マイナス(支払い義務)』に転じました」


「……プッ、あははは! 給料を払うどころか、会社に金を払って掃除させてもらっているわけ? ……最高に『高貴な(コストのかかる)』ボランティアね」


私は、手にしていた冷めたエスプレッソを、彼が今しがた磨き終えたばかりの床に、一滴、また一滴と落として見せた。


「あ……っ! せ、セシリア! 何をするんだ! 僕が三時間かけて、王家の誇りを込めて磨いた床を……!」


「……寄るな、不良債権。……貴方の『誇り』なんていう不純物が混じっているから、床に曇り(ロス)が出るのよ。……いい? エリオット。貴方はもう王子ではないわ。……我が社の貸借対照表バランスシートにおける、『回収不能見込みの滞納者』……。……つまり、ゴミ同然の存在なのよ」


「……ぐっ、おのれ……! リリィ……リリィはどこだ! 彼女なら、僕を優しく救ってくれるはず……!」


「……リリィ? ああ、彼女なら今、最上階のスタジオで『聖女のモーニング・ルーティン』のライブ配信中よ。……一回の投げ銭で貴方の年収を超える額を稼いでいるわ。……貴方のような『不採算個体』に構っている暇なんて、一秒もないはずだけど?」


その時、ロビーの自動ドアが「ドォォォォン!」という轟音と共に吹き飛んだ。

 アルヴィスが、今度は「モップを両手に持ち、全裸に近い姿(※公式ユニフォームの短パンのみ)」で滑り込んできた。


『エリオットーー!! 掃除の基本は広背筋だぞーー!! 腕だけで拭くから腰が引けるんだ!! 見ろ、俺の「グレート・ラット・スプレッド・モップがけ」を!! 摩擦熱で床の細菌を根絶やしにしてやるぞおおお!!』


アルヴィスが超高速で床を磨き始めると、床面が鏡のように輝き、エリオットの情けない顔が鮮明に映し出された。


「寄るなイケメン! 貴方のその『摩擦熱』、スプリンクラーが作動したらどうするの!? ……エリオット。……見なさい。貴方が見下していた騎士団長は、今や『一時間あたりの清掃面積』で世界記録を更新しようとしているわ。……貴方の『王族の血』よりも、彼の『筋肉の汗』の方が、よっぽど市場価値が高いのよ」


「……そ、そんな……。筋肉に……僕の血筋が負けるというのか……っ!」


「……血筋? ふふ。……そんな『相続税のかからない紙切れ』みたいなもの、我が社のシュレッダーにかけておしまいなさい」


私は、絶望に震えるエリオットを無視して、次なる「人事考課(処刑台)」の書類をめくった。

 悪役令嬢セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ。

 彼女の覇道は、かつての敵すらも「資産価値」という物差しで徹底的に解体し、再利用可能なパーツへと作り変えていく。


「……さあ、次の決算を始めましょう。……エリオット。……貴方のその『涙』。……ロビーの加湿器の補充液として回収してあげるわ。……一滴たりとも、タダで流させないわよ」


窓際の王座を夢見る清掃員と、世界を支配する悪役令嬢。

 二人の「格差」は、もはや神の奇跡でも埋められないほどに、残酷な数字となって確定していた。

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