表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第9章 隠密カイル、世界諜報網「ローゼン・リークス」の構築

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/59

39話 影のコストを「見える化」しなさい

「ローゼン・アイ」の稼働により、全世界の表層的なデータが黄金の瞳に集約され始めてから数時間。私の執務室には、ディートリヒの論理回路ロジックでは捉えきれない「生身のノイズ」が漂っていた。


「……カイル。そこにいるのは分かっているわ。貴方の気配、我が社の高感度・魔導センサーが『不審な熱源』として感知しているもの」


私が冷徹に、デスクの上の紅茶に角砂糖を落としながら告げると、天井の影が不自然に歪み、漆黒の装束に身を包んだカイルが音もなく着地した。


「……流石です、セシリア様。……ですが、このセンサー、感度が良すぎます。……私が愛用している『隠密用・無臭石鹸』の香料すら、成分解析プロファイリングされるのは少々……」


「……プッ、あははは! 無臭石鹸の成分なんてどうでもいいわ。……カイル、貴方が率いる『影のギルド』。……彼らの活動報告書、読ませてもらったけれど……。……あまりにも『非効率』の極みね。……一ゴルドの情報を得るために、三日も天井裏に張り付いているなんて、人件費の無駄ロスだと思わないの?」


「……隠密とは、忍耐です。……情報の鮮度を保つためには、現場の空気を……」


「……ナンセンスよ。……空気を吸っても一銭にもならないわ。……今日から、貴方のギルドは『ローゼン・リークス』へと組織改編リストラなさい。……天井裏に張り付くのは卒業よ。……これからは、全世界の不満分子を『情報提供者アフィリエイター』として組織化するのよ」


カイルは戸惑い、前髪の隙間から鋭い眼差しを私に向けた。

「……アフィリエイター……? ……それは、プロの隠密ではない素人を、情報の末端に置くということですか?」


「ええ、その通り。……いい? カイル。世界には『秘密を喋りたくてたまらない人間』が五万といるわ。……彼らに、特製のアカウントを発行なさい。……価値のある内部告発リーク一回につき、我が社の『ローゼン・ポイント』を一〇〇ポイント進呈。……ポイントが貯まれば、免罪符や高級プロテインと交換できる……。……どう? 世界中が、貴方の代わりに『監視の目』になってくれるわ」


「……プロの誇りを……ポイントで買うと……。……セシリア様……。……貴女は、影の世界の美学すらも、クーポン券で書き換えるおつもりですか……」


「……あら、美学で家族が養えるのかしら? ……カイル、貴方の部下たちにも、福利厚生として『有給休暇』と『労災保険』を適用してあげるわ。……ただし、ノルマ未達成の『情報の死蔵』は、即刻解雇クビよ」


その時、執務室の窓の向こうで、アルヴィスが叫びながら通り過ぎた。


『カイルーー!! 影に隠れてばかりじゃ筋肉が萎縮するぞーー!! 表舞台に出て、俺と一緒に「公明正大な自家発電」を手伝えーー!! 筋肉は裏切らないが、影は光が射せば消えるんだぞーー!!』


「寄るなイケメン! 貴方のその『光り輝く暑苦しさ』のせいで、カイルの隠密魔法が強制解除デバフされかかっているじゃないの! ……カイル、アルヴィスのあの『騒音』を逆利用しなさい。……アルヴィスをデコイにして注目を集めている間に、貴方の部下たちが情報の「物理的バックアップ」を強奪するのよ。……イケメンを『撹乱用コスト』として計上なさい!」


「……っ! アルヴィス様を……デコイに……。……皮肉なことに、最高に理に適っています。……彼の存在感は、あらゆる隠密の努力を一瞬で無に帰すほどの『光害ノイズ』ですから……」


「……ふふ、決まりね。……カイル。世界中の『不都合な真実』を、我が社の『収益資産』に変えなさい。……真実リーク一つで、一国の王を破産させる……。……これこそが、最強の情報のレバレッジよ」


私は、不敵に微笑みながら、影の世界の「管理台帳」をカイルへと差し出した。

 悪役令嬢セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ。

 彼女の覇道は、闇に潜む者たちの誇りすらも「成果報酬型レベニューシェア」へと落とし込み、ついに世界の深層をも自らの帳簿に組み込み始めた。


「……さあ、次の決算を始めましょう。……カイル。……貴方のその『無口な忠誠』。……一分あたりいくらの『コンサル料』として計上すればいいかしら?」


カイルは、音もなく膝をつき、深い影へと溶けていった。

 だが、その手には、世界を裏側から支配するための「黄金のログインID」が握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ