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寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第7章 寄るなイケメン! 騎士団長アルヴィスの「筋肉発電」限界突破

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34話 筋肉疲労と減損処理

ガリア帝国の夜空をピンク色の「筋肉オーロラ」が埋め尽くし、世界中の天文学者が「物理法則の破綻」を嘆き始めてから十二時間。

 ローゼン・タワーの地下発電ルームは、ついに静寂を取り戻していた。……正確には、あまりの高電圧に耐えかねた送電ケーブルが焼き切れ、物理的なシャットダウンを余儀なくされたのだ。


「……マックス。地下の『動力源アルヴィス』の稼働状況は?」


私が防護服に身を包み、スチームが立ち込める地下室へ降り立つと、マックスは煤まみれの顔で、ひしゃげたルームランナーの残骸を指差した。


「……CEO。アルヴィス様は現在、放電しきった電池のように真っ白に燃え尽きておられます。……ですが、筋肉のパンプアップ状態だけは維持されており、体温は未だに鉄を溶かすほどですな。……資産価値としては、一時的な『機能停止(減損処理)』の状態です」


床には、文字通り白灰化したアルヴィスが、仰向けで「フロント・ラット・スプレッド」のポーズを固めたまま静止していた。彼の口からは、魂の代わりのような虹色の蒸気が漏れている。


「……プッ、あははは! 見なさい、この無様な減損アセット。……世界を照らす光(愛)を気取っていたのに、最後は自分の熱量でショートするなんて。……リスク管理セルフコントロールが甘すぎるわ」


私は、手にしていた冷たいミネラルウォーター(ローゼン・アクア)を、彼の顔面に容赦なくぶちまけた。


『——起きなさい、不良在庫。……一秒寝るごとに、ガリア帝国の鉄鋼プラントが数千万ローゼンの機会損失を出しているのよ。……貴方のその、熱苦しい筋肉の維持費、誰が払うと思っているの?』


「……っ!? ……ハッ! セ……セシリア様……? 夢の中で、貴女に冷たく『ゴミを見るような目』で踏みつけられていたのですが……。……現実の方が、より冷たい……最高だ……!!」


アルヴィスがガバッと跳ね起きる。その瞬間、彼の肌から蒸気が爆発的に噴き出し、地下室がサウナのような熱気に包まれた。


「寄るなイケメン! 貴方のその『再起動リブート』に伴う廃熱、環境基準に違反しているわよ! ……いい? アルヴィス。貴方の筋肉は、今やガリアの重工業と一蓮托生なの。……疲れたなんて、一株主(私)が許さないわ」


その時、執務室のモニターが緊急割り込みで点滅した。映し出されたのは、あまりの「筋肉オーロラ」の眩しさにサングラスをかけたガリア皇帝ルーデンスだ。


『セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ……! 貴様のところの騎士団長が放った「愛の雷」のせいで、我が国のコンピュータ・ネットワークがすべて「セシリアLOVE」という文字に書き換えられたぞ! これはサイバーテロだ! 賠償しろ!』


「あら、陛下。……テロですって? ……心外ね。それは、我が社の『高付加価値エモーショナル・エネルギー』が、貴方の国の脆弱なシステムをアップデートしようとした結果よ。……むしろ、無償でフォントのデザインを刷新してあげたのだから、コンサルティング料を請求したいくらいだわ」


『な、なんだと……っ!』


「……それより陛下。……その『筋肉ノイズ』が発生している間、貴方の国の製鉄所の出力が二〇〇パーセント上がった事実は無視するのかしら? ……愛(筋肉)の力は、効率をも凌駕するのよ。……追加の『愛の送電』を希望するなら、国境付近の鉄道利権も差し出しなさい」


通信を遮断する。

 私は、ようやく体温が下がってきたアルヴィスに向き直った。


「……さて。アルヴィス、貴方の筋肉の『減損処理』は取り消してあげる。……その代わり、次の決算までに、筋肉による『概念的送電(ワイヤレス給電)』をマスターしなさい。……電線という固定資産コストを削減するためよ。……できなければ、貴方のその広背筋、我が社の『高級羽毛布団』の詰め物としてリサイクルするわよ」


「……っ! 筋肉のワイヤレス化! なんという無茶振りを……! だが、貴女の期待に応えるためなら、俺の細胞一つ一つをアンテナに変えてみせる!! 行くぞ、セシリア様ァッ!!」


アルヴィスが再び、地下室でシャドーボクシング(という名の自家発電練習)を開始した。

 悪役令嬢セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ。

 彼女の覇道は、イケメンの命を「エネルギーの安定供給」という名の帳簿に縛り付け、世界のインフラをその手の中に収め続けていく。


「……さあ、次の決算を始めましょう。……マックス。……アルヴィスの汗を回収して、新製品の『超伝導潤滑油』として売り出しなさい。……一滴たりとも、無駄にしないわよ」


タワーに響く、筋肉の駆動音。

 それは、世界を管理する悪役令嬢の、冷徹で合理的なメロディでもあった。

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