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寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第7章 寄るなイケメン! 騎士団長アルヴィスの「筋肉発電」限界突破

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31話 エネルギー危機は「筋肉」で解決しなさい

聖教国エルドラドを「ローゼン・データセンター」へと改装し、数千万人の信徒の懺悔ログを24時間体制で解析し始めてから数日。私の執務室には、魔導計算機の過負荷オーバーロードを示す赤いアラートが鳴り響いていた。


「……マックス。この電力消費量の急上昇、どういうことかしら? 聖教国の魔導脈マナ・ラインだけでは、データマイニングの電力を賄いきれていないというの?」


私が冷徹に問いかけると、マックスは眉間に深い皺を寄せ、電力需給のグラフをホログラムで投影した。


「……CEO。仰る通りです。聖教国のDX化により、一秒間に生成されるデータ量は想定の三倍。現在の魔導発電ユニットでは、一日に四時間の『計画停電』を余儀なくされる計算です。……このままでは、顧客の懺悔データが消失し、キャッシュフローが滞る恐れがありますな」


「……プッ、あははは! 計画停電だなんて、発展途上国のインフラみたいなことを言わないで。……データは二十四時間、止まることなく利益ローゼンを生み出し続けなければならないのよ。……ディートリヒ、代替エネルギーの案は?」


モニター越しに、ディートリヒが充血した目で答える。


「……セシリア様。……クリーンエネルギー……太陽光、風力……どれも出力が不安定です。……ですが、一つだけ……理論上、無限の熱量を排出し、かつ『給与コスト』以外に燃料を必要としない高エネルギー源が、我が社のすぐ近くに浮遊しています……」


「……ふふ、やっぱりそれしかないわね」


私が窓の外に目を向けると、そこにはローゼン・タワーの外壁を「片手懸垂」で登りながら、もう片方の手でプロテインをシェイクしているアルヴィスの姿があった。


「セシリア! 見てくれ! 高高度の薄い空気の中で呼吸することで、俺の心肺機能は今、ドラゴンの心臓エンジンをも超えたぞ! 貴女の視界に、俺の研ぎ澄まされた広背筋を焼き付けてみせよう!!」


「寄るなイケメン! 貴方のその『無駄な熱量』、タワーの外壁を焦がしているのが分からないの!? ……マックス、直ちにプロジェクト『マッスル・ジェネレーター』を始動なさい。……アルヴィスの熱量を一ワットも逃さず回収し、データセンターの主電源に直結するのよ!」


数時間後。ローゼン・タワーの地下、特設された「超伝導マッスル・ルーム」。

 そこには、最新の魔導熱電素子を埋め込んだ巨大なルームランナーと、全身に電極を装着されたアルヴィスが立っていた。


「……セシリア様。これはいったい……? 俺をこのような密室に閉じ込め、無数のコードで繋ぐとは……。もしや、ついに俺を『自分専用の愛の発電機』にする決意を固めたのか!?」


「勘違いしないで。貴方はただの『動産』よ。……いい? 今から貴方が一歩走るごとに、聖教国の子供たちが一人、ログインエラーから救われるわ。……十歩走れば、一人の罪人が救済(課金)される。……貴方の筋肉は、今日からこの世界の『救済の心臓』になるのよ」


「……っ! 俺が走れば、世界が救われる……。そして、その制御を貴女が握る……! なんという重責! なんという光栄! 走るぞ、俺の筋肉があああ!!」


アルヴィスが咆哮と共にルームランナーを蹴り出した。

 一瞬でメーターが振り切れ、タワー全体の照明が、アルヴィスの筋肉の輝きと連動して眩しく明滅する。


「……マックス。出力はどうかしら?」


「……驚異的です、CEO。アルヴィス様一人の出力で、聖教国全体の電力を余裕でカバー。……さらに、余剰電力を蓄電池バッテリーに貯蔵すれば、隣国ガリアへの電力輸出ビジネスすら可能ですな」


「素晴らしいわ。……一円の燃料費もかけずに、イケメンの自己顕示欲だけで世界を照らす。……これこそが、私の提唱する『循環型社会サーキュラー・エコノミー』の完成形よ」


私は、満足げにエナジードリンクを飲み干した。

 だが、この「筋肉発電」には、思わぬ副作用があった。


一時間後。

 アルヴィスの出力が上がりすぎたせいで、タワー内のWi-Fi(魔導通信)にノイズが走り始めた。


「……セシリア様! 困りますぅ! 私の自撮り動画、ライブ配信中なのに筋肉のノイズで画面がムキムキになっちゃいましたぁ!」


リリィがスマホを手に飛び込んできた。画面を見ると、可憐な聖女の顔が、アルヴィスの放つ強力な電磁波の影響で、なぜか「ゴリラのようなシルエット」に歪んでいる。


「リリィ、それはそれで新しい需要があるんじゃないかしら? ……『筋肉聖女のモーニングルーティン』として、一回五万ローゼンで配信しなさい。……アルヴィス! 出力を調整なさい! 貴方の筋肉が、私の利益(リリィの顔)を価値毀損させているわよ!」


「……っ! 難易度を上げてくるな、セシリア! 最大出力のまま、繊細なノイズ制御……! 筋肉の……筋肉の限界を超えてみせるぞおおお!!」


地下室で、アルヴィスの筋肉が黄金色の放電を開始した。

 悪役令嬢セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ。

 彼女の覇道は、イケメンの汗と情熱すらも「エネルギー資源」として帳簿に書き込み、ついに一国家のインフラをも完全に掌握しようとしていた。


「……さあ、次の決算を始めましょう。……アルヴィス、一秒休むごとに一万ローゼンの『遅延損害金』が発生するわよ。……死ぬ気で発電しなさい」


私の不敵な笑い声が、筋肉の咆哮と共に、電化された聖教国の空へと響き渡った。

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