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寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第6章 聖教国の「免罪符」をデジタル化(魔導化)せよ

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27話 懺悔ログのビッグデータ解析

聖教国エルドラドの空を覆いつくした「神パス」のリリース通知。それは、数千年の間、ブラックボックス化されていた「信仰」という名の不透明な市場に、初めてメスを入れた瞬間でもあった。


「……マックス。一分あたりの新規会員登録者数コンバージョンはどうなっているかしら?」


私がローゼン・タワーの執務室で冷徹に問いかけると、マックスは眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、ホログラムで映し出された巨大なヒートマップを操作した。


「爆発的です、CEO。特に『匿名懺悔・超高速処理オプション』への課金率が極めて高い。聖教国の住民たちは、今まで神父に顔を見られて打ち明けるのをためらっていた『後ろ暗い秘密』を、我が社の非対面チャットボットになら喜んで差し出しているようです」


「……プッ、あははは! やっぱりね。人間、神様よりも『ログが残らない(と信じ込んでいる)機械』の方が信用できるのよ。……それで、集まった懺悔データの『解析結果』は?」


私が視線を移すと、そこにはディートリヒが構築した超弩級の魔導計算機が唸りを上げていた。彼がモニターに映し出したのは、聖教国全体の「罪の傾向」を可視化したグラフだ。


「……セシリア様。集計された懺悔ログの一三パーセントは『隣人の牛を羨んだ』、二二パーセントは『配偶者に言えない隠し金』。……ですが、特筆すべきは残りの六五パーセントです。……その内容はすべて、教皇庁の役人たちによる『横領』『公金流用』『不適切な異性関係』のリーク……。信徒たちは懺悔という名目で、教会の腐敗を我が社に『通報』しているのです」


「……素晴らしいわ。信仰の場を『内部告発プラットフォーム』に作り変えるなんて、我ながら最高のUIユーザーインターフェース設計だったわね。……カイル、このビッグデータを使って、教皇庁の主要閣僚たちの『弱み(アセット)』をリストアップしなさい」


天井の影からカイルが音もなく着地した。

「……すでに完了しています。枢機卿の三人は、我が社の関連会社が運営する『高級会員制クラブ』の常連客。彼らの未払いツケ合計は、教会の年間予算の一割に相当します。……これを公開すれば、彼らの聖職者としての『市場価値』は一瞬でマイナスに転落するでしょう」


「いいわ。でも、ただ公開するのはもったいないわね。……彼らには『広告付き免罪プラン』の被験者になってもらいましょうか。……彼らが説教をするたびに、我が社のオイルやリリィの美容液の広告を挟むのよ。……逆らうなら、昨夜の『秘密の告白』を全信徒にプッシュ通知で一斉送信してあげて」


その時、執務室の窓を激しく叩く筋肉の鼓動が聞こえた。

 見ると、タワーの外壁を「反復横跳び」の慣性だけで登ってきたアルヴィスが、顔面をガラスに密着させて叫んでいた。


「セシリア! 聖教国の騎士団が、自分たちの不祥事がデータ化されるのを恐れて、メインサーバー室を物理的に破壊しようとしているぞ! 俺の広背筋で、サーバーを守る『肉の防壁』となってこようか!? 筋肉こそが、データの消失を防ぐ唯一のバックアップだ!!」


「寄るなイケメン! 貴方のその汗で、サーバーがショートしたら修繕費を誰が払うと思っているの!? ……物理的な破壊? ……ふふ、ちょうどいいわ。……ディートリヒ、サーバー室の防衛システムを『課金ゲート』に切り替えなさい」


「……課金ゲート、ですか?」


「ええ。扉を一回叩くごとに、彼らの『騎士団運営基金』から一〇万ローゼンが自動で引き落とされるように設定するのよ。……破壊に成功する頃には、彼らの騎士団は一文無しで倒産デフォルトしているわ。……アルヴィス、貴方はその扉の前で『集金人』として立っていなさい。……拳を振り下ろそうとする騎士たちに、最新の『ローン返済シミュレーション』を見せてあげるのよ!」


「……っ! 暴力(物理)を借金(論理)で封じる、究極のカウンター! 愛しているぞ、セシリア様ッ!!」


アルヴィスは再び、狂喜乱舞しながら垂直に落下していった。……本当に、あの男を「警備費」という名の固定費として計上して正解だったわね。


「……さて。教皇様は、今ごろ自分の『聖なる言葉』に、リリィの『あざとい笑顔付き・新発売リップ』の広告が挿入されて、泡を吹いている頃かしら」


私は、手元の端末で教皇庁の株価チャート(私が勝手に作成した仮想指標)を眺めた。

 急転直下。

 信仰という名の「不透明なサービス」は、データという名の「透明な刃」によって解体され、再構成されていく。


「……マックス。教皇庁が保有している『天国の土地分譲権』。……あんな架空の不動産、今すぐ我が社の『メタバース事業』のサーバー用地として没収なさい。……神様が住む場所がないなら、我が社のワンルームマンションを『法人割引』で貸し出してあげてもよくてよ?」


「……。CEO、神様を賃貸物件に住まわせるのは、流石に『バグ』の領域かと……」


「いいえ。家賃を払わない存在は、この世界における『ノイズ』よ。……神様だって、私の帳簿ルールに従ってもらうわ」


私は不敵に微笑み、次なる「監査報告書」にペンを走らせた。

 聖教国エルドラド。

 数千年の神秘を誇ったその国は、今や一秒間に数テラバイトの「経済ログ」を生成する、巨大なローゼン・グループの外部ストレージへと成り下がろうとしていた。


「……さあ、次の決算を始めましょう。……教皇様、貴方の『後悔』は、一文字いくらで買い取ってあげればいいかしら?」


夕日に染まる大聖堂が、今や巨大な「QRコード」を投影するスクリーンと化していた。

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