表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若ちい
第6章 聖教国の「免罪符」をデジタル化(魔導化)せよ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/59

26話 神の代理人は「非効率な中間搾取」である

魔王城を「ローゼン・パンデモニウム・ランド」へと改装し、魔王を子羊の着ぐるみバイトに叩き落としてから数日。私の執務室には、次なる「不採算部門」からのクレームが山積みになっていた。


「……マックス。この聖教国エルドラドから届いた『異端審問予告状』。……これ、紙の質が悪いわね。我が社の再生紙の方がよっぽど滑らかだわ。シュレッダーにかけて、緩衝材にでもしなさい」


私が冷徹に命じると、マックスは無表情にシュレッダーを起動した。ガガガ、と音を立てて神聖なる警告文がゴミに変わる。


「CEO。聖教国は、我が社が提供を開始した『簡易型・魔導懺悔アプリ』が、彼らの独占事業である『免罪符』の売上を著しく阻害していると主張しています。……曰く、『神との対話にデバイスを介するのは不敬であり、魂の救済には現世の紙(免罪符)が必要である』とのことです」


「……プッ、あははは! 魂の救済に物理的な紙が必要だなんて、どこの印刷業者のプロパガンダかしら? 聖教国の教皇様は、クラウドコンピューティングの概念すら持ち合わせていないようね」


私は、手にしていたクリスタル製のペンを回し、ホログラムで映し出された聖教国の収支報告書(カイルが盗んできた極秘資料)を眺めた。


「見てなさい、マックス。彼らの免罪符ビジネスは、製造原価ほぼゼロの紙を、信徒の『恐怖心』という情緒的価値で吊り上げて売る、極めて効率の悪い詐欺に近いモデルよ。……しかも、その利益の七割が、教会の高官たちの豪華な食事と、無駄に広い大聖堂の維持費に消えている。……これこそ、経済の血流を止める『巨大な血栓』そのものよ」


「……いかがいたしますか? 彼らは『神の罰』をチラつかせて、民衆を煽動しようとしていますが」


「罰? ……ふふ、私の方がよっぽど恐ろしい罰(キャッシュフローの停止)を与えてあげるわ」


その時、執務室の窓の外で「ドォォォォン!」という凄まじい衝撃音が響いた。

 見ると、飛行船の窓に顔を押し付けたアルヴィスが、両手の筋肉をパンパンに膨らませて、こちらにウィンクしている。


「セシリア! 聖教国の騎士団が、国境で『聖なる結界』を張って我が社の物流を止めているぞ! 俺の広背筋で、その結界ごと粉砕してこようか! 筋肉こそが、神をも超える唯一の真理だ!!」


「寄るなイケメン! 貴方の筋肉が放つ熱気で、私の特製アイスコーヒーがぬるくなったじゃないの! ……結界なんて、力で壊すのはエネルギーの無駄よ。……貴方は、その溢れる力を『聖教国向け・人力パケット通信』に使いなさい。……一分間に一万回の反復横跳びで、情報を物理的に国境の向こうへ運ぶのよ!」


「……っ! 反復横跳び通信! 筋肉が光ファイバーを超える瞬間か! 喜んで、マイ・プレジデント!!」


アルヴィスは超高速で反復横跳びを開始し、その風圧で雲を散らしながら国境へと消えていった。……本当に、あの男の燃費の悪さは異常だわ。


「……さて、本題よ。カイル、準備は?」


天井の影から、カイルが数枚の「銀色のカード」を持って現れた。


「完了しています、セシリア様。……聖教国が発行している紙の『免罪符』。その偽造防止用魔法陣のコードを解析し、我が社の決済システム『ローゼン・ペイ』と完全同期させました。……今この瞬間から、彼らの免罪符は、我が社のアプリで『一括管理・自動償却』が可能になります」


「素晴らしいわ。……『わざわざ教会へ行って、高い紙を買うのはもう終わり。これからは、スマホを振るだけで天国へのポイント(徳)が貯まります』……。このキャッチコピーで、聖教国の全信徒にプッシュ通知を送りなさい」


一時間後。聖教国の首都エルドラドでは、建国以来のパニックが起きていた。

 大聖堂の前で、高い免罪符を買おうと長蛇の列を作っていた信徒たちが、一斉に手元の魔導端末を見つめて叫び声を上げる。


「な、なんだこれは!? 『期間限定! 今なら懺悔一回につき、次回の免罪符が半額になるクーポン進呈中』……!? しかも、神父の説教をスキップできる『プレミアム・アドフリー・プラン』まであるぞ!」


「教会で買うより、アプリで課金した方が三倍も『徳』が貯まるスピードが速いじゃないか! ……おい、神父! この紙、返品リファンドできるか!?」


「な、何を言っているんだ! 返品など……っ!」


教会の窓口は、返品を求める信徒たちと、アプリの操作方法を聞きに来た老人たちで大混乱に陥った。

 教皇庁の役人たちが血相を変えて飛び出してくるが、私はモニター越しに彼らへ慈悲のない宣告を下した。


『——聖教国の皆様。……神様は、貴方たちが苦労して稼いだお金を、教皇様の「裏口座」に送金することを望んでいるのかしら? ……我が社が精査したところ、教皇庁の負債額は一二〇〇億ローゼン。……貴方たちの信仰心は、すでに彼らの「利息支払い」に充当されていますわよ』


「な……根拠のないデマを……!」


『根拠? ……今、貴方たちの教会の全帳簿を、全世界にライブ配信(公開)したわ。……ほら、そこに書いてある「聖遺物修繕費」の五億ローゼン。……実は教皇様が隣国のカジノで負けた分だったみたいね? ……あ、今なら解約手数料は無料よ?』


信徒たちの顔から、盲信が消え、冷酷な怒りが燃え上がる。

 聖教国エルドラド。数千年の歴史を持つ宗教国家の「経営権」が、一人の悪役令嬢による『デジタル・トランスフォーメーション』によって、音を立てて崩壊していく。


「……さあ、教皇様。……破産宣告デッドラインのお時間よ。……貴方の神様に、私の『請求書』を届けてくださる?」


私は、不敵な笑みを浮かべて、次なる「買収完了」の印を手に取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ