33-約束
「あなたの騎士を解任してください」
ジークフリートはその場に跪く。
予想外の言葉に、レアは驚きを隠すことができなかった。
(どうして……?)
そもそも、私の前で話すことなのだろうか。
「レアの療養のために、この国を出て行こうと思います」
その言葉に、レアは驚き、涙が込み上げてくるのを感じた。
身体が良くなったら、ここを去り、どこかで一人、ひっそりと生きていくつもりだった。
ジークフリートはラインハルトの異母弟__皇帝の落胤であり、とても自分なんかが釣り合う相手ではない。
彼の今後を考えると、自分の存在は邪魔者でしかないということはよく理解していた。
だが、彼はそんなことは一切気にしていないどころか、今ある皇太子直属の騎士という立場を捨ててまで、自分と共に過ごすと宣言している。
「ジーク……」
ラインハルトは冷めた目でジークフリートを見下ろす。
そして一言、
「認めぬ」
予想通りの言葉だが、ラインハルトは続ける。
「と、言いたいところだが、そうするとお前は逃げ出すのだろうな」
その言葉には諦めも含まれていた。
この数ヶ月間で、ラインハルトは嫌というほど愚か者の男たちを見せ付けられていた。
オーギュスト、アンリ国王、そしてジークフリート。
彼らを変えることは不可能だ。
だからラインハルトは約束を交わすしかない。
「お前を騎士から解任はしない。だが条件付きで自由は認める」
「余の危機の時にはすぐに駆けつけて来い」
その言葉に、ジークフリートは黙って頷く。
それを確認すると、ラインハルトはジークフリートに背を向ける。
「余が死んだら次期皇帝はお前だ」
あぁ、余の父も愚か者だったな。
皇帝は自分に仕えていた侍女を本気で愛していた。
その愛を貫くあまり、皇后を愛することができなかった。
余の大切な弟にはそうなってほしくない。
「皇帝になれば、好きなところに行けなくなるし、愛する者を伴侶にすることもできなくなる……それを忘れるな」
ラインハルトの声音はどこか優しく、大切なたった一人の家族を励ましているようでもあった。
「ありがとうございます……兄さん」
ジークフリートは、思わず口をついて出た言葉に動揺し、口元を押さえる。
その言葉にラインハルトは微笑んだが、それを誰にも見せることはなかった。
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