28-最後の抵抗
「ヴィヴィアン、そろそろ部屋で休もうか」
オーギュストは車椅子を動かす。
もう二度とラインハルトと会うことはないだろう。
どうして、ここにジークフリートがいないのか。
先ほどは姿を見られずに済んで安心していたというのに、パーティから去ることになった瞬間、レアは全く相反することを考えていた。
彼との未来を夢見ていた。
そんな夢を見せてくれた彼に感謝を伝えたかった。
二ヶ月間の監禁生活を耐え続けたのは、このパーティで彼の顔をまた見られる可能性があったからだ。
この後、エーデルラントはこの異常な状態の王女との婚約を破棄するだろう。
そして自分は一生、オーギュストのおもちゃにされる。
娼婦だった頃と、一体何が違うのだろうか。
これ以上苦しまないためには、どんな方法でもいいから自死を選ぶしかない。
(嫌だ、)
どうしてここに来てまで自ら死を選ばないといけないのか。
このままでは、自分の人生は一生変わらない。
後悔しながら死ぬくらいなら、最後くらいは足掻いて殺された方がマシだ。
必死で口を開いて、声を出そうとしているのに、喉からはヒューヒューと空気が漏れるような音しか鳴らない。
二ヶ月間の監禁で、喉は完全に使い物にならなくなっている。
それでもレアは叫んだ。
「た、すけて……!」
必死で絞り出した叫びは声にもならない、ガラガラの掠れた雑音に近かった。
この場にいる誰にも、その声は届かなかったのではないか。
ラインハルトは口を一文字に結び、何か考え事をしている様子だった。
偽装結婚無効後の、ジークフリートをそばに置くための次の計画を考えているのだろう。
会場を出てオーギュストが向かったのは地下牢ではなく、ヴィヴィアンの部屋だった。
「ヴィヴィアン、ダメじゃないか、大人しくしてないと」
レアをベッドに寝かせ、オーギュストは呟く。
オーギュストの目は暗い。
「皇太子に助けを求めたって無駄だよ、あの男は自分の利益にならない行動はしない」
レアの必死の叫びは、一番聞かれたくない男には届いていた。
「ころ、して……」
声を振り絞る。
その言葉を聞いたオーギュストの顔から笑みが消え失せる。
「ヴィヴィアンはそんなこと言わない」
そして、無理やりレアの衣服を引き千切った。
これから起こることを想像し、レアはわずかに残った力で抵抗を試みる。
無駄な抵抗だったが、オーギュストの逆鱗に触れるには十分だった。
「卑しい娼婦の分際で! 今更、貞淑ぶる必要があるか!」
オーギュストが怒鳴る。
「なぜお前ごときがヴィヴィアンと同じ顔している! なぜ僕の最愛の妹の顔を貼り付けて生きている!」
彼の目には涙が浮かんでいた。
(やっと、この男は、私がヴィヴィアンじゃないと認めた……)
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